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ドラゴンクエスト7の小説ブログです。 9プレイ日記もあります。
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「どうだ、アルス殿。俺のあとをついで総領になってくれるか?」


思わず口に乗せてしまった言葉は予想以上に俺自身の胸に響いた。まるで貫かれるよう。そして波間の小さな船のように揺れる。真下に控える大いなるものへの恐怖と不安を抱えながら、ゆらゆらと。賑わう人々のさなか、俺とアルスの心だけが、その孤舟に置き去りになっていた。


アルスは突然の申し出に戸惑っていた。その表情を見て激しく後悔する。おのれの欲望のために、向かい合うべきではない選択をアルスに突きつけてしまったことを。


勢いに乗せて、言えるかと思った。別れの挨拶をしている最中、目の前に立つ少年の若い鼻梁、唇の形、風に嬲られる黒い髪、すべてに船に暮らす親族たちの特徴を読み取らざるを得なかった。見上げてくる双眸に抗い得ない魅力があった。手放しがたかった。…試してみたかった。


愚かだ。
独善的な感傷、醜い欲望に突き動かされて浅薄な言動を。
どちらの答えも、誰も救わない。
大切なお前を傷つけるだけだ。
それゆえ試して仮に勝利したとしても、そのことは俺自身すら救わないのに。



困惑した表情。かわいそうな少年は決断せざるを得ない。答えを聞いても俺は笑い飛ばした。これ以上アルスのそんな顔を見ていたくはなかった。

幸せでいてほしい、それが俺の一番の希望でなくて何だというのだ。胸に去来する欲望はいずれも、その希望の前では叶う必要のないものばかりだった。船にアルスを迎え入れて民たちを安心させたかったことも、その肩を抱いて名を呼びたかったことも。大きな声で民たちに語りながら、心の中で祈る。考えるな、アルス、と。知ったところでいたずらに思い悩み傷つくだけだ。ここにある苛烈などお前は何も知らなくて良い。


物言いたげな少年を送り出す。忘れてくれと、俺は願い続けている。余計な言葉を、どうか忘れてくれ。何も考えないで。でなければこの世でもっとも幸福な事実、何よりも俺を満たす真実が、あまりにも残酷なものに変貌してしまう。

下手な笑顔も船員たちの心からの笑いにまぎれて今ならごまかせた。船員に敬礼を促すカデルの声が、俺の言葉のあとに続く。今しがたの苦いやりとりは、船中を埋め尽くす勇者凱旋の興奮と勢いにかき消された。



――――――――――
お題はこちらのサイト様から頂きました
capriccio様


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ゲーム大好きモル元です。

9のプレイも一段落ついて、そろそろ7小説に戻ろうか、と書き始めた途端、シャークアイの知名度や活動人口の少なさを再び思い知って打ちひしがれている今日この頃です。皆さんにシャークアイのことを思い出してもらったり、好きになってもらうために、めげずに頑張って書いていきます!

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