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ドラゴンクエスト7の小説ブログです。 9プレイ日記もあります。
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001 二重の虹
002 青の妨害
003 涙をみせて
004 黒に染まれ

お題配布元:delucia様

「詳細」以下に各話の登場人物や時期などがまとめてあります。
必要の方はご参照下さい。
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コスタールの海軍が、ますます増長している。わが手下どもがそこへ向かうことを嫌がる始末だ。フォロッドのような軍事大国に比べ、コスタールは国王が戦嫌いだとか、当初すぐに陥落しそうな様子を見せていた。それが突如として海軍を編成し、わが軍に歯向かっている。新しい魔物の群を送り込んでも送り込んでも、その海軍は飽きもせず戦い続けた。

「コスタールのこと、いかがなさいます、オルゴ・デミーラ様?」

部下の一人が問うた。二本の鋭い牙に唾液が滴っていた。魔物は力こそ強いが愚なのが欠点だと、かつて神に言われたことがある。だが、力こそすべてではないか? 力さえあれば策略など要らぬ。

「いかがもなにも、潰すわよ? もちろん、たっぷり痛めつけてよ?」

神は人間に肩入れし、われら魔物を人間の世界から退け続けてきた。だが、今の時代は違う。われらの勢力は人間界についに手を伸ばし、その絶望を食らい、世界を征服しようとしていた。

人間は砂粒のよう、われらからすればまばたきをする程の短さで、その命を散らす。儚く空しいのに、ばかばかしいことに、なんとその一粒一粒が、考え事をしているらしい。われらは目障りな砂漠を吹いて飛ばし、世界をバラバラにして封じ込める遊びに興じていた。順番に、順番に、より苦しむように。人間というのは、嘆きの声だけは上等なのだから。


だがその砂粒どもが時に砂嵐になってわが装束を汚そうとする。なんという身の程知らずか。暗澹たる海の向こうに千里を走る魔の眼を向けると、そこにはぼんやりと薄く青い輝きを放つ砂粒があった。忌々しい、あれがコスタールの海軍の長、懲りることのない一人の人間だ。


「精霊のしもべめが。わたしに歯向かうことがどういうことなのか、思い知らせてやるわ。」


ちかちかと輝いて人間どもを集めている、長い髪をした青年は若く美しく、その四肢を八つ裂きにすることを想像して私は唇を舐めた。周りの砂粒たちは青年に結集していた、おそらくはあの腕にこびりついた水の紋章をありがたがっているのだろう。だが、見ればその紋章こそ傑作だった。

思わず笑いがこみあげた。だって、まともな形をしていないのだ。なんとも無様な、出来損ないの形をしていた。あれでは精霊の加護など、ろくに受けてはいない。哀れな連中だ、あんな惨めなものを恃んで、われに立ち向かおうなどと。

「海の魔物どもよ、わが軍をコスタールへ! われも見に行こう。」
「オルゴ・デミーラ様、直々にですか?」
「そうよ、やっと面白そうなのだから。」

 

 

朽ちていく世界よ、割れる海よ、悲鳴をあげるがよい。
青き水の紋章など何にもならぬと教えてやろう、憎き者シャークアイよ、その心絶望の漆黒に染まれ。

――――――――――

お題はこちらのサイト様から頂きました
http://www.s-ht.com/~way/delucia/

 

重たい装束の下に覗く王の踝は痩せて細く、かつて若かりし頃の、美しく逞しかった姿を覚えていた私は、思わず眼を逸らしそうになった。白日の下に王が姿を見せることは最近では稀だった。兵士長の私は今ではどの大臣よりも頻繁に謁見を願う身でありながら、それがほの暗い謁見の間や、夜の兵士長室ばかりで行われたから、彼が短い年月のうちにこれほどまで痛々しくやつれていることに今日まで気づかなかったのだ。


鎮魂の日。
青い装束をまとった僧侶たちが王の背後に整列した。
この王国が魔物に襲われるようになってから、二度目の儀式だった。


一度目は冬だった。二度目の今日は、夏の一日を割いた。気候こそ晴れ晴れとしていたが、王の心はあの日と同じように、いや、あの日よりもさらに凍えているのだろう。半年前には戦死者たちの碑を前にして慟哭した王は、今日はひどく物静かだった。誰に語りかけることもせず、涙することもせず、ただ陽の下に哀れな敗北者の姿を晒していた。


墓、墓、墓…。
戦士たちの、そして平和の世に生を享けたならば幸福に生きられたはずの民たちの。


一度目の儀式から半年が経ち、聳え立つ墓標の数は、軍を担う私ですら、目の当たりにした瞬間には絶望に膝を折りそうになるほどに増えていた。国土は荒れ、死者を慰めるための花さえ、満足に咲かなかった。


僧侶たちの唱和が途切れ、大司教の祈りがそれに続いた。続いて王が定められた短い鎮魂の言葉を捧げ、そしてその次に、兵士長の私が指名される。滞りなく進められる儀式。平和の国コスタールが、このような儀式に慣れる日が来ようとは。だが語り始めた私の声は、思いがけずせり上がった嗚咽にかき消された。

「だ、大丈夫ですか、兵士長さま…」

近くにいた尼僧が一人二人、私を案じて駆け寄る。式は乱れ、ざわめきが起こり、やがて王までが私を振り返った。しかしこの事態にもさしたる動揺を見せぬ我が王の姿を見た時、私は愈々混乱してしまった。王は絶望に犯されて心を失っていた、まるで彼自身が彷徨える死者のごとく。全身に震えが走り、たまらず膝をつく。幾多の民の血を吸った大地に触れ、私の装備は金属の悲痛な嘆きをあげた。だが無数の墓と私の間で、王はうなだれもせず、ただ立ち尽くしている。


もはや悲しみに泣いてはくださらないのか。
悔しくて立ち上がってはくださらないのか。


王国から集結した若人の命を散らしたのは、兵士長たる私の責任に他ならない。だが王は、一度として私を責めなかった。王はかえって私に詫びた。元来戦争を好まない私が悪かったのだ、お前にも、お前の兵たちにもすまないことをした、と。

地を見つめていた私の目前に、王の靴と、その細い踝が見えた。いつの間にか王は私のそばに来ていて、その身をかがめ、そして枯れ枝のような手を私の肩にかけた。


「落ち着かぬか、兵士長。お前がそんなでは、他の者が動揺する。」
「動揺すればよいのです! 王よ、畏れながらあなたもだ!」


私は涙を拭きもせず王を振り仰いだ。礼を失した私は、怒りと悲しみに駆られて、死ぬまでの忠誠を誓った主君を睨んでいた。王の双眸はその私の姿を見て、ようやく揺らいだ。

「このままではこの国は滅びます! エデンに仕えるべきは鎮魂する彼ら僧たちばかりではありますまい! 立ち上がらねば、戦士たちが立ち上がらねば…!」
「しかし、我が軍は…」

王はそこまで口にしてから言い淀んだ。そうだ、我が軍は脆弱なのだ。その上、兵の数も削られ、ここに並ぶ墓碑となり、魔物の跋扈する荒波の上ではもはやまともに戦うことなどできぬのだろう。それでも私は王に絶望してほしくはなかった。諦め、民に詫びつつ、国とともに死を待つ、悲劇の王でいてほしくなかった。家族のない王、悲しすぎる運命に、ともに立ち向かうには私では不足なのだろう。それでも私は彼に、涙をみせてほしかった。心を殺さず、思うさま嘆き、そして怒りに立ち上がる王でいてほしかったのだ。

「…申し訳ありません、取り乱しました。」
「いや、よいのだ。確かにお前の言うとおりだ…」

その時、王の眼尻が一瞬、僅かに濡れたのを私は見逃さなかった。王よ、と私は咄嗟につぶやいた。絶望は人を虚無にする、人は、希望する時にしか嘆かないのだ。そのことを私は王によって教えられた。だからこそ私は、王の瞳の上に閃いた、かすかな希望の気配に縋ったのだ。

「…王宮に戻ったら大臣たちを呼ぼう。私に考えがある。」
「王様…」
「…伝説の海賊船を知っているか。こんな時代にも関わらず、ただ一隻の船で、海の魔物に立ち向かっているという。」

王は切り立った崖の向こう、遠くの海を見つめていた。それから私の傍らにゆっくりと立ち上がった。王がまばたきをする、その頬に、一筋の涙が伝った。

――――――――――

お題はこちらのサイト様から頂きました
http://www.s-ht.com/~way/delucia/

 

僕はいらいらしてペンを置いた。考えは全然まとまらない。長い旅は、途中でやめることなどもう出来ないのに、いつも簡単に先に進めるわけでもなかった。探し物をしたり、道に迷ったり、どこへ行けばいいのか、分からなくなったり。世界地図は僕の机の上で蒼褪めた空白を訴えていた。この広すぎる海に何もないわけがない。まだ救えていない場所がきっとあるはずだ。それなのに、そこに到達するための方法が見つからない。

これからどうすればいい? 
紅茶はすっかり冷めて苦くなり、僕はそれを飲む気にもならない。


…こんな時、キーファがいればいいのに。


僕はかつて別れた仲間を思う。キーファ。友達だった。いや、あの時一緒にいてキーファと別れたマリベルとガボは、今も僕とともににいるし、新しい仲間も増えて僕はひとりきりというわけではないのだけれど。だけど情けないことだと思いながら僕はキーファを忘れられない。キーファは特別だった。子供の頃からずっと僕を、僕の心を支えていた。彼の走る情熱、後を顧みない、あの勢いが。


ずっと一緒にいられると思っていたのに。
旅の扉の向こうに、あんな障壁が待ち受けていると想像してなどいなかった。


だけどキーファは違った。キーファは、ずっと探していたんだ、と言った。ずっと、オレにしかできない何かがあるはずだと、そう思っていたと。ユバールの夜に独り言のように心を語る彼の言葉を、僕は身体を横たえたまま黙って聞いていた。その時すでに苦い諦めが僕の中を満たしていた。ひたひたと、冷たい水の沁みるように。

では、キーファの心にはずっと、離れよう離れようとする力が働いていたのか。
がんじがらめの城から、そして気心の知れた、僕たち仲間から。

…そうじゃない、離れたかったわけじゃない、それは違うと思おうとしても、結局はその悲しい推測が正しいということを、僕は知っていた。


苦い紅茶を渇いた喉に流し込む。世界地図を畳んで、ベッドの上にあおむけに身体を倒した。ボスン、と勢いよくマットレスが沈み、跳ね返る。そのまま脱力して長く深いため息をついた。腕を持ち上げるとめくれた袖の蔭に、いびつな痣が見えていた。

僕がうらやましかったとキーファは言った。アルスにはなすべきことがある、運命があると。この腕の痣が証だと彼は言った。彼の言葉が本当なのかどうか、僕には全然自信がない。時々昔の文字が読めたりするのは、この腕の痣のせい? じゃあ、エスタードの東の遺跡から旅立つことが出来たのも、この痣のせいなのか? だけど過去に行っても、僕はただ、人々の運命を眺めることしか出来ない。たとえ彼らが苦しんでいたとしても、運命を変えることなんか出来ないのだ。いつもいつも繰り返されるその苦い思いは、ユバールのキャンプでキーファの決意をただ受け入れるしかなかったことに似て、僕は自分の無力さに打ちひしがれる。

こうと決めて進むキーファにいつも助けられていたのは、行く道が、一緒だったから。
それが別々になってしまったなら、決意して進む彼をとどめるなど出来ないと、僕は一番知っていたのだ。


やっと進むべき道を見つけたんだ。
お前だって、喜んでくれるだろ?


別れの日の彼は正直なところ、僕らと別れて悲しいというより、自分のすべきことを知ってわくわくしているといったほうが近かった。だからマリベルも怒っていたっけ。勝手なやつね、って。泣きながら呆れるような唐突な別れだった。結局キーファは、僕らに対して悲壮そうな顔をして本当はあっけらかんと、思慮深げな顔をしてその実は本当に気持ちのままに、ライラさんを守りたくて突っ走っていった。ライラさんの前では、僕らのことなんか。

僕は腹が立ってきて枕をぼすんと殴った。キーファのことを考えると、やっぱり今も腹が立つ。悲しいとかさみしいとかそんな気持ちもあるけれど、とにかく腹が立つ。だってお別れなのにうきうきしてるのがばればれなんだ、全く! その後キーファのことをお父さんのバーンズ王さまに報告したのも僕なんだぞ、勝手なやつ!

こんな痣をもって生まれて、キーファといつも冒険遊びをしていた理由。
行き場のないのは僕も同じだったから。
国に居場所がないと感じていたキーファと同じように、
本当はいつだって僕も、フィッシュベルにいてはいけないような気持ちがしていた。
だけど、ユバールに受け入れられたキーファのように、
僕が僕の居場所を見つけるのはいつになるのだろう。
そんな日が来るのだろうか。
僕は旅ばかり続く。
それも今は、道を見失って。


「アルスー?」

女の子の声に僕は我に返った。トントン、とノックがして、鍵をかけていなかったドアが開いた。

「アルスぅ~、ご飯食べないのぉ~? あら、なあに真っ暗にして。」

半開きのドア越しに中を覗き込んで、アイラはちょっと驚いたように声を上げた。日はいつのまにかすっかり落ちて、部屋は蝋燭なしでは暗すぎる時間になっていた。僕は皆には見られたくない姿をうっかり見られてしまって、何でもないような顔をしてベッドを下りた。ユバールの女の子は僕に近づいてきて顔を覗き込む。

「寝てたの? 全然返事ないんだから。」

つんとして意志の強そうな、それでいて優しさのあるその顔立ちのどこかに、僕らは何となしに懐かしさを覚えずにはいられない。いつでも張りがあって、明るい笑いを含んでいるような声にも。

「ごめん、うたたねしちゃってた。」
「何度も呼んだのよ。」

僕はアイラに促されて階段を降りる。まだお腹は減っていなかったけれど、ガボが多分待ちきれないでいるだろうから。踊り場まで来た時、心配して上ってきたメルビンと出くわした。

「ありゃ、疲れた顔をしておるのう」
「いえ、大丈夫です。」

僕の声はまだ少し固かった。悔しいのとさみしいのと、腹が立つのと。心細さ、怖いのとで。メルビンは年長者の目を細めて僕を見た。

「お若いのう。」
「なあに、メルビン?」

後を追って降りてきたアイラがメルビンに声をかけた。僕は振り返り、なんでもないよ、という顔をする。アイラのように、僕も少しはうまく笑えたかな。アイラは僕の微笑を見て、にこっと愛嬌のある笑顔を返した。メルビンは僕の近くに身を寄せると、内緒話をするように僕の耳元に囁いた。


「あまり焦らなくとも大丈夫ですぞ。キーファ殿はな、ちと出会うのが早すぎたのじゃ。」


お年寄りにはお見通しか。僕はそう思ってちょっとびっくりしたけれど、心の中で子供っぽく、そうだそうだ、勝手に行っちゃってずるいぞ、と無二の友をなじった。

――――――――――

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久しぶりの故郷、フィッシュベル。僕はこの土地を、マリベルや他の仲間たちとは離れて、マール・デ・ドラゴーンの船長シャークアイと二人きりで歩いていた。シャークアイが、七色の泉に行きたいと言ったから。

遺跡の洞窟に二人の足音がこだまする。普段、船上では昼夜を問わず靴音を憚らないシャークアイが、今はとても遠慮がちに隣を歩いていることが不思議な気がした。まるで僕の大切な場所を少しも傷つけないようにしているみたいに、彼は丁寧に、物静かに歩いた。普段身につけている鎧やマントを今日は着ていなくて、簡素な白い布の服を着ていることも僕の眼に珍しかった。


シャークアイにこの泉の話をしたとき、最初彼は、「一度その場所に連れて行ってもらえませんか?」と言った。それはいつも僕の希望通りに船を奔らせてくれるシャークアイからの、めったにない頼みだった。多分、旅の終わりに言われたこと以来の、二度目だと思う。けれど、エスタードの東の遺跡が僕とキーファの秘密の遊び場だったと知ると、シャークアイは自分の願いを撤回しようとした。いつかと同じように。 

「アルス殿の大切な思い出の場所なのですね、ではやめておきましょう。」

シャークアイは僕に気を遣ってくれたのだ。だけど僕は、きっとシャークアイなら、泉に連れて行ったとしても嫌な気持ちにはならないだろうと思っていた。結果はその通りで、彼が泉に辿り着いてその水に触れても、僕は大切なものを汚されたという気持ちは少しもしなかった。

「この場所に来てみたかったのですよ。」

シャークアイは僕を振り返って、穏やかな声でそう言った。それから、「ありがとうございます、アルス殿。」と丁寧に言ったから、僕は少し気恥ずかしくなって、「いいえ」と慌てて答えた。そもそも、ここは僕の思い出の場所ではあるけれど、別に僕だけの場所ではない。僕が所有しているわけでも何でもないのだ。

シャークアイはしばらく腰をかがめて水面を見つめていたから、僕はぼんやりとその姿を眺めていた。だが、急にその身体が傾いだ、と思ったあとは、あっという間もなかった。バシャン!という大きな音に僕ははっと我に返った。

「シャークアイ!」

僕は狼狽えながら水辺に駆け寄った。突然目の前から姿を消したシャークアイが、不慮に落ちたのかと思ったのだ。呆然として水面を覗き込むと、また唐突にシャークアイが、変な歓声を上げながら、ザバッと水面に顔を出した。

「シャーク!?」
「いや、はっはっは! すみません、つい。」

さっきまで水に触れることさえ怖々という感じだったのに。シャークアイはきらきらと輝くような笑顔を浮かべながら歓声を上げ、ひとしきり水飛沫を散らかした。

「冷たくていい気持ちだ!」

僕は何が何だかわからなくて、呆れて水辺に座り込んだ。

「…精霊の気配がする。」

シャークアイがそっと呟いた。僕は、突飛な連れの様子が急に静かになったので、何だろうと思って彼を見つめた。

「…本当は来るのが怖かったのですよ。」
「どうして?」
「オレは遠い過去から来た、過去の人間だ。ここは精霊の通い道でしょう。オレはかつては精霊とともにあったつもりだが、今ではもう…なつかしいとも感じられないかもしれないと思っていたのです。」

だけどそうではなかったということが、シャークアイの柔らかな表情に表れていた。七色に揺らめく水は、シャークアイを受け入れて包んでいた。


水の民とは、もともと水の精霊の遠い遠い末裔なのだと、マール・デ・ドラゴーンの人たちは僕に教えてくれた。そして水の紋章を腕に刻まれて生まれたシャークアイは、精霊の加護を受けた者、生まれながらに一族を率いる総領となるべき者だったと。だけど僕はその紋章が今ではシャークアイの腕にはないことを知っていた。それは僕の腕の紋章とひとつになってしまったのだから。


シャークアイは水辺に身体を寄せて両手を岩につき、静かに泉を出た。彼の身体から零れる水滴は、泉を離れてもなおその特別の輝きを失わなかった。まばゆい無数の光に目を奪われていたその時、急に僕は精霊の呼びかけを感じた。心に直接伝わってくる、彼女の声を。シャークアイは僕の顔に何かを読み取ったのか、黙って僕を見つめた。

「シャークアイ、今、精霊が…。」
「すまないが、…オレには何も聞こえないのだ。」
「あ!」

僕はシャークアイの背後を指差した。虹だ。七色の泉の上に、半円形の虹の輪がかかっていた。

この場所にこんな虹が出ているところを、僕は初めて見た。それは精霊からシャークアイに与えられた小さな奇跡だった。精霊はさっき、何も言って行かなかった。ただ、アルス、と僕の名前を呼んだだけだった。だけど、水の流れるように、僕の胸には彼女の心が伝わってきた。子孫シャークアイを懐かしみ、その来訪を喜んでいる心が。心配しなくたって、精霊は今でも自分の子供のようにシャークアイを愛していた。


僕はずぶ濡れになってしまったシャークアイと二人並んで泉の淵に腰掛け、精霊の残した虹がゆっくりと消えていくさまを、長い間、黙って見つめた。ついに虹が消えて、立ち上がったシャークアイは濡れた長い髪を両手で肩の後ろに流した。温かな歓迎のしるしを受けた彼は、幸福そうな瞳をしていた。

――――――――――

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プロフィール
HN:
モル元
性別:
女性
自己紹介:
ゲーム大好きモル元です。

9のプレイも一段落ついて、そろそろ7小説に戻ろうか、と書き始めた途端、シャークアイの知名度や活動人口の少なさを再び思い知って打ちひしがれている今日この頃です。皆さんにシャークアイのことを思い出してもらったり、好きになってもらうために、めげずに頑張って書いていきます!

シャークアイ関連の雑談やコメントなど随時募集中。お気軽に話しかけてやって下さい。世の中にシャークアイの作品が増えるといいなと思って活動しています。

シャークアイ、かっこいいよね!
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