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ドラゴンクエスト7の小説ブログです。 9プレイ日記もあります。
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僕はいらいらしてペンを置いた。考えは全然まとまらない。長い旅は、途中でやめることなどもう出来ないのに、いつも簡単に先に進めるわけでもなかった。探し物をしたり、道に迷ったり、どこへ行けばいいのか、分からなくなったり。世界地図は僕の机の上で蒼褪めた空白を訴えていた。この広すぎる海に何もないわけがない。まだ救えていない場所がきっとあるはずだ。それなのに、そこに到達するための方法が見つからない。

これからどうすればいい? 
紅茶はすっかり冷めて苦くなり、僕はそれを飲む気にもならない。


…こんな時、キーファがいればいいのに。


僕はかつて別れた仲間を思う。キーファ。友達だった。いや、あの時一緒にいてキーファと別れたマリベルとガボは、今も僕とともににいるし、新しい仲間も増えて僕はひとりきりというわけではないのだけれど。だけど情けないことだと思いながら僕はキーファを忘れられない。キーファは特別だった。子供の頃からずっと僕を、僕の心を支えていた。彼の走る情熱、後を顧みない、あの勢いが。


ずっと一緒にいられると思っていたのに。
旅の扉の向こうに、あんな障壁が待ち受けていると想像してなどいなかった。


だけどキーファは違った。キーファは、ずっと探していたんだ、と言った。ずっと、オレにしかできない何かがあるはずだと、そう思っていたと。ユバールの夜に独り言のように心を語る彼の言葉を、僕は身体を横たえたまま黙って聞いていた。その時すでに苦い諦めが僕の中を満たしていた。ひたひたと、冷たい水の沁みるように。

では、キーファの心にはずっと、離れよう離れようとする力が働いていたのか。
がんじがらめの城から、そして気心の知れた、僕たち仲間から。

…そうじゃない、離れたかったわけじゃない、それは違うと思おうとしても、結局はその悲しい推測が正しいということを、僕は知っていた。


苦い紅茶を渇いた喉に流し込む。世界地図を畳んで、ベッドの上にあおむけに身体を倒した。ボスン、と勢いよくマットレスが沈み、跳ね返る。そのまま脱力して長く深いため息をついた。腕を持ち上げるとめくれた袖の蔭に、いびつな痣が見えていた。

僕がうらやましかったとキーファは言った。アルスにはなすべきことがある、運命があると。この腕の痣が証だと彼は言った。彼の言葉が本当なのかどうか、僕には全然自信がない。時々昔の文字が読めたりするのは、この腕の痣のせい? じゃあ、エスタードの東の遺跡から旅立つことが出来たのも、この痣のせいなのか? だけど過去に行っても、僕はただ、人々の運命を眺めることしか出来ない。たとえ彼らが苦しんでいたとしても、運命を変えることなんか出来ないのだ。いつもいつも繰り返されるその苦い思いは、ユバールのキャンプでキーファの決意をただ受け入れるしかなかったことに似て、僕は自分の無力さに打ちひしがれる。

こうと決めて進むキーファにいつも助けられていたのは、行く道が、一緒だったから。
それが別々になってしまったなら、決意して進む彼をとどめるなど出来ないと、僕は一番知っていたのだ。


やっと進むべき道を見つけたんだ。
お前だって、喜んでくれるだろ?


別れの日の彼は正直なところ、僕らと別れて悲しいというより、自分のすべきことを知ってわくわくしているといったほうが近かった。だからマリベルも怒っていたっけ。勝手なやつね、って。泣きながら呆れるような唐突な別れだった。結局キーファは、僕らに対して悲壮そうな顔をして本当はあっけらかんと、思慮深げな顔をしてその実は本当に気持ちのままに、ライラさんを守りたくて突っ走っていった。ライラさんの前では、僕らのことなんか。

僕は腹が立ってきて枕をぼすんと殴った。キーファのことを考えると、やっぱり今も腹が立つ。悲しいとかさみしいとかそんな気持ちもあるけれど、とにかく腹が立つ。だってお別れなのにうきうきしてるのがばればれなんだ、全く! その後キーファのことをお父さんのバーンズ王さまに報告したのも僕なんだぞ、勝手なやつ!

こんな痣をもって生まれて、キーファといつも冒険遊びをしていた理由。
行き場のないのは僕も同じだったから。
国に居場所がないと感じていたキーファと同じように、
本当はいつだって僕も、フィッシュベルにいてはいけないような気持ちがしていた。
だけど、ユバールに受け入れられたキーファのように、
僕が僕の居場所を見つけるのはいつになるのだろう。
そんな日が来るのだろうか。
僕は旅ばかり続く。
それも今は、道を見失って。


「アルスー?」

女の子の声に僕は我に返った。トントン、とノックがして、鍵をかけていなかったドアが開いた。

「アルスぅ~、ご飯食べないのぉ~? あら、なあに真っ暗にして。」

半開きのドア越しに中を覗き込んで、アイラはちょっと驚いたように声を上げた。日はいつのまにかすっかり落ちて、部屋は蝋燭なしでは暗すぎる時間になっていた。僕は皆には見られたくない姿をうっかり見られてしまって、何でもないような顔をしてベッドを下りた。ユバールの女の子は僕に近づいてきて顔を覗き込む。

「寝てたの? 全然返事ないんだから。」

つんとして意志の強そうな、それでいて優しさのあるその顔立ちのどこかに、僕らは何となしに懐かしさを覚えずにはいられない。いつでも張りがあって、明るい笑いを含んでいるような声にも。

「ごめん、うたたねしちゃってた。」
「何度も呼んだのよ。」

僕はアイラに促されて階段を降りる。まだお腹は減っていなかったけれど、ガボが多分待ちきれないでいるだろうから。踊り場まで来た時、心配して上ってきたメルビンと出くわした。

「ありゃ、疲れた顔をしておるのう」
「いえ、大丈夫です。」

僕の声はまだ少し固かった。悔しいのとさみしいのと、腹が立つのと。心細さ、怖いのとで。メルビンは年長者の目を細めて僕を見た。

「お若いのう。」
「なあに、メルビン?」

後を追って降りてきたアイラがメルビンに声をかけた。僕は振り返り、なんでもないよ、という顔をする。アイラのように、僕も少しはうまく笑えたかな。アイラは僕の微笑を見て、にこっと愛嬌のある笑顔を返した。メルビンは僕の近くに身を寄せると、内緒話をするように僕の耳元に囁いた。


「あまり焦らなくとも大丈夫ですぞ。キーファ殿はな、ちと出会うのが早すぎたのじゃ。」


お年寄りにはお見通しか。僕はそう思ってちょっとびっくりしたけれど、心の中で子供っぽく、そうだそうだ、勝手に行っちゃってずるいぞ、と無二の友をなじった。

――――――――――

お題はこちらのサイト様から頂きました
http://www.s-ht.com/~way/delucia/

 

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9のプレイも一段落ついて、そろそろ7小説に戻ろうか、と書き始めた途端、シャークアイの知名度や活動人口の少なさを再び思い知って打ちひしがれている今日この頃です。皆さんにシャークアイのことを思い出してもらったり、好きになってもらうために、めげずに頑張って書いていきます!

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