ドラゴンクエスト7の小説ブログです。
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凪いだ海の平和に、
オレは居場所を失くす。
昼間は好きだ。太陽の光が、すべてを覆い尽くすから。対して星々の輝きは残酷だ。闇に浮かぶ無数の青白い光の粒は夜毎、おまえはどうしたのだと問いかけてくる。かれらに応えて明滅する光が、かつては望めばいつでも、この身体の上に灯っていた。
それは過去のオレを常に勇気づけていたわけではなかった。オレの生まれ享けた紋章はほんの一部分にすぎなかった。一族を導くとき、その不安定な淡い輝きは時に頼りなくも思えたものだ。だが失った後になって、オレはそれがどれだけ強い意味をもっていたのかを思い知らされた。
日陰に寝転び、抜けるような青空を見上げる。鮮やかに映える、大きな一対のマスト。船の者たちの暮らす石造りの建物。噴水。視界を走る幾筋のロープ。どれもオレのものだった。舵の真下に位置する、覇者の居室も。だが今は戻る気にならない。
「シャークアイ様ぁ、どうなさったんです?」
同じ日陰にいたボロンゴが、気だるそうなオレを案じて声をかけた。暇なのだ、と答えかけてやめた。所在ない。日差しを除けるように、両腕で顔を覆う。やるべきことがないわけではないが、魔王軍と戦うほどの仕事はもうなかった。
「転寝ですかい、キャプテン?」
「うん」
「はは、平和ですなあ」
ボロンゴはオレの近くに腰を下ろし、網の修理を始めた。そう、平和でも、仕事はあるのだ。生きていくという仕事が。どんな姿になろうと、命の続く限り。人間とは畢竟そういうものであり、おのれもまた例外ではなくその宿命にあることを、オレは頭では理解していた。
アルスたちの活躍のおかげで、魔王は滅び、世界を脅かす重苦しい雲は晴れた。白い鳥たちの鳴き交わす大海原、風を孕む毎日は楽しかった。沢山笑い、海の幸を享受する。幸福な平和の暮らし。だが同時にオレは後ろめたかった。じりじりと照りつける日にさえ、長い袖の服ばかり着た。この腕を船員たちに見せることに抵抗があった。
代々、水の民を守り、率いてきたのは、紋章を継ぐ者と決まっていたではないか。
それなのにオレはアルスを引き連れてくることも出来ず、かといって、再び民を導く力を取り戻すあてもない。
キャプテン、と呼ばれるたびに躊躇う。
その親しみと信頼のこもる呼び声に、オレはもう、応えることが出来ない。
すまない……
そのうえ、オレは民のすべてを欺いていた。
わが力を失ったと、はっきりと告白することが出来ないでいた。
ただオレの臆病のために。
(これ以上何も失えないのだ。)
そびえ立つ海上の城、明るい掛声を交わす海賊の民たち。真実を告げ、お前たちを失う勇気がない。すべては本当はあの力とともに、既にこの手をすり抜けてしまったものだとしても。
考え事をすると息が詰まるようだ。過去に経験のない、胸の重たさを持て余す。このまま舵を東にして、昼の海をずっと渡っていたかった。孤独の夜が近づいてくることが怖い。闇に浸る肉体に向かい合うことが。
潰えた光は、二度と戻らない。
――――――――――
お題はこちらのサイト様から頂きました
capriccio様
オレは居場所を失くす。
昼間は好きだ。太陽の光が、すべてを覆い尽くすから。対して星々の輝きは残酷だ。闇に浮かぶ無数の青白い光の粒は夜毎、おまえはどうしたのだと問いかけてくる。かれらに応えて明滅する光が、かつては望めばいつでも、この身体の上に灯っていた。
それは過去のオレを常に勇気づけていたわけではなかった。オレの生まれ享けた紋章はほんの一部分にすぎなかった。一族を導くとき、その不安定な淡い輝きは時に頼りなくも思えたものだ。だが失った後になって、オレはそれがどれだけ強い意味をもっていたのかを思い知らされた。
日陰に寝転び、抜けるような青空を見上げる。鮮やかに映える、大きな一対のマスト。船の者たちの暮らす石造りの建物。噴水。視界を走る幾筋のロープ。どれもオレのものだった。舵の真下に位置する、覇者の居室も。だが今は戻る気にならない。
「シャークアイ様ぁ、どうなさったんです?」
同じ日陰にいたボロンゴが、気だるそうなオレを案じて声をかけた。暇なのだ、と答えかけてやめた。所在ない。日差しを除けるように、両腕で顔を覆う。やるべきことがないわけではないが、魔王軍と戦うほどの仕事はもうなかった。
「転寝ですかい、キャプテン?」
「うん」
「はは、平和ですなあ」
ボロンゴはオレの近くに腰を下ろし、網の修理を始めた。そう、平和でも、仕事はあるのだ。生きていくという仕事が。どんな姿になろうと、命の続く限り。人間とは畢竟そういうものであり、おのれもまた例外ではなくその宿命にあることを、オレは頭では理解していた。
アルスたちの活躍のおかげで、魔王は滅び、世界を脅かす重苦しい雲は晴れた。白い鳥たちの鳴き交わす大海原、風を孕む毎日は楽しかった。沢山笑い、海の幸を享受する。幸福な平和の暮らし。だが同時にオレは後ろめたかった。じりじりと照りつける日にさえ、長い袖の服ばかり着た。この腕を船員たちに見せることに抵抗があった。
代々、水の民を守り、率いてきたのは、紋章を継ぐ者と決まっていたではないか。
それなのにオレはアルスを引き連れてくることも出来ず、かといって、再び民を導く力を取り戻すあてもない。
キャプテン、と呼ばれるたびに躊躇う。
その親しみと信頼のこもる呼び声に、オレはもう、応えることが出来ない。
すまない……
そのうえ、オレは民のすべてを欺いていた。
わが力を失ったと、はっきりと告白することが出来ないでいた。
ただオレの臆病のために。
(これ以上何も失えないのだ。)
そびえ立つ海上の城、明るい掛声を交わす海賊の民たち。真実を告げ、お前たちを失う勇気がない。すべては本当はあの力とともに、既にこの手をすり抜けてしまったものだとしても。
考え事をすると息が詰まるようだ。過去に経験のない、胸の重たさを持て余す。このまま舵を東にして、昼の海をずっと渡っていたかった。孤独の夜が近づいてくることが怖い。闇に浸る肉体に向かい合うことが。
潰えた光は、二度と戻らない。
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モル元
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女性
自己紹介:
ゲーム大好きモル元です。
9のプレイも一段落ついて、そろそろ7小説に戻ろうか、と書き始めた途端、シャークアイの知名度や活動人口の少なさを再び思い知って打ちひしがれている今日この頃です。皆さんにシャークアイのことを思い出してもらったり、好きになってもらうために、めげずに頑張って書いていきます!
シャークアイ関連の雑談やコメントなど随時募集中。お気軽に話しかけてやって下さい。世の中にシャークアイの作品が増えるといいなと思って活動しています。
シャークアイ、かっこいいよね!
9のプレイも一段落ついて、そろそろ7小説に戻ろうか、と書き始めた途端、シャークアイの知名度や活動人口の少なさを再び思い知って打ちひしがれている今日この頃です。皆さんにシャークアイのことを思い出してもらったり、好きになってもらうために、めげずに頑張って書いていきます!
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