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ドラゴンクエスト7の小説ブログです。 9プレイ日記もあります。
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からくりに心などないと人は言う。そうだろうか。確かに彼女エリーは、人間のように憎んだり罵ったりはしない。ただ決められたことをするだけだ。私の記憶させた動作だけを。スープを作り、私に運ぶ。たどたどしく平坦な機械の声で私に話しかけ、簡単な受け答えを。だがそれが優しさでなくて何だろう。優しさが、心でなくて何だろう。






現代に戻って最初にフォロッドの西の研究所を訪ねたとき、ベッドの上にはきれいに骨だけになったゼボットの姿があった。動いているのはエリーだけだった。

”コノすーぷ飲メバ ぜぼっと元気ニナル…”

僕たちは彼女をとめることが出来ない。何年も、気の遠くなるほどの時間、繰り返し、繰り返し彼を案じてスープを作ってきた彼女を。

「…行きましょう、アルス。」

マリベルが僕たちを急きたてた。ここはゼボットさんとエリーの、二人だけの場所。長居してはいけないのだ。





夜、宿の窓に月を見上げる時間になっても、僕はなんとなしに眠れないでいた。脳裏に蘇る、砂っぽい研究所の床。横たわったゼボットの骸骨、そして。

「ねえ、マリベル。僕思うんだけど…」

マリベルはベッドに身体を横たえていたけれど、やっぱり起きていて、僕のほうに身体を向けた。

「何よ?」
「…ゼボットさんはさ、自分が死んだあと、エリーさんがああなるって知ってたんだよね?」
「…それもそうね」

ゼボットさんはエリーを生み出した研究者なのだ。そのくらいのことは知っていたはずだ。だから、あれはわざと。いつまでも、いつまでも、エリーがああして同じ動作を繰り返すのは、きっと。

「今日エリーを見たときはショックだったけど…ゼボットさんは自分が死んじゃったこと、エリーに教えたくなかったんじゃないかなあ。」
「急に死んだのかもしれないわよ、ゼボットは。…いえ、そうね。」

マリベルは、うーん、と唸って少しの間黙った。

「そうね…どうなのかしら。ゼボットなら、不慮の死にもあらかじめ対策していそうよね。」

でも簡単な動作しか覚えないのかな。人の死を、認識するようには出来ないのだろうか。それとも、僕が思うように、わざと教えなかったのかな。

「確かにご主人さまが死んじゃったって知るよりは、ずっと病気なんだと思って看病してたほうが幸せかもしれないわね。」
「うん。」
「…わかんないわよ。ロボットの気持ちなんて、なあんにも!」

マリベルが突き放すように言った。それがマリベルなりの思慮深さだってこと、僕は知っている。会話が途切れて、僕はまた月を見上げた。


ロボットの気持ち。
ゼボットさんは、エリーの気持ちを考えていたんだろうな。

でも僕には、僕たちには、同じ人間のゼボットさんの気持ちも分からない。
ロボットと暮らし続けた人。
彼はロボットの気持ちを理解する、きっと特別な人間だった。本当にロボットに共感するのはゼボットさんだけだろうと思う。

僕に分かるのはこういうこと。
エリーは一人ではないんだ。そう信じているんだ。きっと、壊れるまで。






僕らの旅の終わりを探す頃。再び訪れた研究所で、白い骨に寄り添うように、エリーが伏していた。僕らはその光景にまたショックを受けて立ち竦んだ。ガボはすぐに泣いた。わけもわからず。

「エネルギーが切れたのね。」

ここは荒れた土地で、僕たちは二人に捧げる花を見つけることも出来ない。


エリーは花を摘まなかった。繰り返し死者を弔い、ロボットの長い寿命を一人で生きさせることより、病気の主人のためにスープを作り続けさせるほうを、ゼボットさんは選んだ。僕はやっぱりそう思った。人間の命の長さしかないゼボットさんが、機械のエリーと死ぬまでずっと一緒に生き続けるために、そうしたのだと。

主人の骨の隣で、穏やかに寄り添う機械。もう動かない、静かに朽ちていく永遠の眠り。

「ガボ、泣かないでお祈りしましょうよ。」

ずっと一緒に生きて、そして一緒に死んだのだ。

僕たちは胸の前で手を組み、二人の冥福を祈った。


――――――――――
お題はこちらのサイト様から頂きました
capriccio様


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ゲーム大好きモル元です。

9のプレイも一段落ついて、そろそろ7小説に戻ろうか、と書き始めた途端、シャークアイの知名度や活動人口の少なさを再び思い知って打ちひしがれている今日この頃です。皆さんにシャークアイのことを思い出してもらったり、好きになってもらうために、めげずに頑張って書いていきます!

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