ドラゴンクエスト7の小説ブログです。
9プレイ日記もあります。
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グランエスタードのお庭に、花々が咲き乱れている。
こんなに咲いていたかしら……?
キーファお兄さまがいなくなってから、心には、
ぽっかりと大きな穴が開いてしまったみたいだった。
お父さまのためにも、
いつまでも気を落としていてはいけないと、わかっていたのだけれど……。
お兄さまは明るくて、冒険好きで、やさしくて、いつも私をかわいがってくれて。
ずっと一緒にいてくれるって思っていたの。
だから、アルスと冒険ごっこをしているのを、楽しそうねって思って、私はただ見守っていたの。
あとから冒険のお話を聞かせてもらうのが大好きだった。
愉快そうなお喋りを聞くひとときが、大好きだったの。
だけどお兄さまは急にいなくなった。そして私はお庭を見ることも、ずっと忘れていたのだわ。
大切にしていたお庭は少しだけ、荒れてしまった。
城の者が気を遣って世話をしてくれていても、持ち主の私が心をかけないのでは、花も萎れてしまうに決まっているわ。
けれど季節はめぐり、また花が咲く。
何年も、何十年も、
もしかしたら、何百年も続くのかも知れない。
そう、遠い昔から、ずっとこうして、咲いていたのよ……。
よく晴れた空、海のにおいのする風、気持ちいいなんて思ったの、いつぶりでしょう。
遠くに、アルスたちの姿が見えた。
お兄さまのいなくなったことを慰めてくれたガボ。
いつか初めて来た時には、何だかどんどんお兄さまが忘れられてしまう気がして、冷たくしてしまった、メルビン。
そしてひときわ目立つのは、真っ赤な服、真っ黒な髪をした、はつらつとした女の人。
アイラ……。
私は真紅の薔薇をひとつ摘んで、急いでアルスたちのところに走っていく。
間に合うかしら。まだ間に合うかしら。
旅急ぐアルスたち。まだ、翼を使わないで。魔法で飛んでいかないで。
「アイラ!」
細い靴が石畳にあたって、私は転びそうになる。
アイラはとても機敏、さっと駆け寄って私を支えてくれた。
「リーサ姫? どうなさったの?」
「ああ、アイラ! ありがとう、助けてくれて。」
薔薇の花、ひとつ、懐かしい瞳をした人に差し出す。
お庭で咲いた薔薇。
グランエスタードの、私のお庭で咲いていたの。
「まあ、私に?」
アイラは微笑んで私の贈り物を受け取ると、
それを漆黒の髪にさした。踊るように軽やか、流れるように自然な動作で。
「ありがとう。光栄ですわ、リーサ姫様。」
「リーサと呼んで下さい。アイラ、どうかまた立ち寄って下さいね。」
私は笑っていたと思う。
いつから笑えるようになっていたのかしら。こんなにはっきりと、お喋りもできるようになって。
頬は固く、言葉はいつも、音になる寸前に見失ってしまって、誰ともお話ができなかったわ。
何を言うつもりだったかしらと考えて、いつもそこで気づくの、
私の心の中は、からっぽだったこと。
何も言うことなんてなかったと。
そして私は沈黙した。深い深い、何もない暗い淵を見下ろし、呆然として………
アイラはにっこりと微笑んで、そして約束してくれた。
命を賭しての戦いなのに、きっぱりと明るい声で。
「ええ、必ずよ。リーサ。」
その笑顔の、
何てまばゆく、なつかしいことでしょう。
どうして心が、これほど満たされるのでしょう。
きっといつまでも、胸が温かいでしょう。
旅立ってしまっても、決して不安にならないの。
今宵、独りきりでバルコニーに佇んだ時にも、
私の捧げた薔薇の花ひとつ、
髪に飾ったあなたを、思い描くだけで。
――――――――――
お題はこちらのサイト様から頂きました
capriccio様
書きながら、女の子二人もいいなぁ、と思いました。
リーサはどんどん喋らなくなっていって、「やばい、病んでる…!」ってハラハラしたけど、
アイラが来てからは元気になって、ほっとしました。
まだ若いのでリーサにはこれから思う存分キャッキャしてほしいです!
こんなに咲いていたかしら……?
キーファお兄さまがいなくなってから、心には、
ぽっかりと大きな穴が開いてしまったみたいだった。
お父さまのためにも、
いつまでも気を落としていてはいけないと、わかっていたのだけれど……。
お兄さまは明るくて、冒険好きで、やさしくて、いつも私をかわいがってくれて。
ずっと一緒にいてくれるって思っていたの。
だから、アルスと冒険ごっこをしているのを、楽しそうねって思って、私はただ見守っていたの。
あとから冒険のお話を聞かせてもらうのが大好きだった。
愉快そうなお喋りを聞くひとときが、大好きだったの。
だけどお兄さまは急にいなくなった。そして私はお庭を見ることも、ずっと忘れていたのだわ。
大切にしていたお庭は少しだけ、荒れてしまった。
城の者が気を遣って世話をしてくれていても、持ち主の私が心をかけないのでは、花も萎れてしまうに決まっているわ。
けれど季節はめぐり、また花が咲く。
何年も、何十年も、
もしかしたら、何百年も続くのかも知れない。
そう、遠い昔から、ずっとこうして、咲いていたのよ……。
よく晴れた空、海のにおいのする風、気持ちいいなんて思ったの、いつぶりでしょう。
遠くに、アルスたちの姿が見えた。
お兄さまのいなくなったことを慰めてくれたガボ。
いつか初めて来た時には、何だかどんどんお兄さまが忘れられてしまう気がして、冷たくしてしまった、メルビン。
そしてひときわ目立つのは、真っ赤な服、真っ黒な髪をした、はつらつとした女の人。
アイラ……。
私は真紅の薔薇をひとつ摘んで、急いでアルスたちのところに走っていく。
間に合うかしら。まだ間に合うかしら。
旅急ぐアルスたち。まだ、翼を使わないで。魔法で飛んでいかないで。
「アイラ!」
細い靴が石畳にあたって、私は転びそうになる。
アイラはとても機敏、さっと駆け寄って私を支えてくれた。
「リーサ姫? どうなさったの?」
「ああ、アイラ! ありがとう、助けてくれて。」
薔薇の花、ひとつ、懐かしい瞳をした人に差し出す。
お庭で咲いた薔薇。
グランエスタードの、私のお庭で咲いていたの。
「まあ、私に?」
アイラは微笑んで私の贈り物を受け取ると、
それを漆黒の髪にさした。踊るように軽やか、流れるように自然な動作で。
「ありがとう。光栄ですわ、リーサ姫様。」
「リーサと呼んで下さい。アイラ、どうかまた立ち寄って下さいね。」
私は笑っていたと思う。
いつから笑えるようになっていたのかしら。こんなにはっきりと、お喋りもできるようになって。
頬は固く、言葉はいつも、音になる寸前に見失ってしまって、誰ともお話ができなかったわ。
何を言うつもりだったかしらと考えて、いつもそこで気づくの、
私の心の中は、からっぽだったこと。
何も言うことなんてなかったと。
そして私は沈黙した。深い深い、何もない暗い淵を見下ろし、呆然として………
アイラはにっこりと微笑んで、そして約束してくれた。
命を賭しての戦いなのに、きっぱりと明るい声で。
「ええ、必ずよ。リーサ。」
その笑顔の、
何てまばゆく、なつかしいことでしょう。
どうして心が、これほど満たされるのでしょう。
きっといつまでも、胸が温かいでしょう。
旅立ってしまっても、決して不安にならないの。
今宵、独りきりでバルコニーに佇んだ時にも、
私の捧げた薔薇の花ひとつ、
髪に飾ったあなたを、思い描くだけで。
――――――――――
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書きながら、女の子二人もいいなぁ、と思いました。
リーサはどんどん喋らなくなっていって、「やばい、病んでる…!」ってハラハラしたけど、
アイラが来てからは元気になって、ほっとしました。
まだ若いのでリーサにはこれから思う存分キャッキャしてほしいです!
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モル元
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女性
自己紹介:
ゲーム大好きモル元です。
9のプレイも一段落ついて、そろそろ7小説に戻ろうか、と書き始めた途端、シャークアイの知名度や活動人口の少なさを再び思い知って打ちひしがれている今日この頃です。皆さんにシャークアイのことを思い出してもらったり、好きになってもらうために、めげずに頑張って書いていきます!
シャークアイ関連の雑談やコメントなど随時募集中。お気軽に話しかけてやって下さい。世の中にシャークアイの作品が増えるといいなと思って活動しています。
シャークアイ、かっこいいよね!
9のプレイも一段落ついて、そろそろ7小説に戻ろうか、と書き始めた途端、シャークアイの知名度や活動人口の少なさを再び思い知って打ちひしがれている今日この頃です。皆さんにシャークアイのことを思い出してもらったり、好きになってもらうために、めげずに頑張って書いていきます!
シャークアイ関連の雑談やコメントなど随時募集中。お気軽に話しかけてやって下さい。世の中にシャークアイの作品が増えるといいなと思って活動しています。
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