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ドラゴンクエスト7の小説ブログです。 9プレイ日記もあります。
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「あらっ、船が見えるわ!」

フィッシュベルの、気持ちよい浜辺に寝転んでいた僕は、
双眼鏡を手にしていたマリベルがそう叫んだので体を起こした。

遠い遠い海の向こうに、霞める島をのぞむ。
かつてはエスタードは切り取られた島で、波のかなたには何も見えなかった。

「どの船?」
「決まってるじゃない。ほら。」

マリベルが僕に双眼鏡を渡す。
マリベルは、網元のお嬢様として好き放題できるのも今のうち、という年頃で、
よく僕の家に遊びにきて僕を浜辺に誘った。

何をするでもなく、海を見たり、こうして転寝したり。


そうでないとき、マリベルが色々と、
海のこと、船のこと、漁のこと、
それに天体の働きについて真面目に勉強しているのを僕は知っていた。

マリベルはいつのまにか美人になっていて、そして、ちょっと不良になった。
何しろ少し前までは、世界中を飛び回って魔物退治していたのだから、
今、平和になって、網元の仕事を教わって、
さあそろそろ結婚も、という周囲の期待、
マリベルがこんなふうになるのも無理はない。
と言って、アミットさんたちに心配をかけるのはもうこりごりなので、別段荒れたことはしない。
そのかわりに、
彼女はどことなくけだるい。



波間に幾艘もの船が見える。
漁船、貿易船、客船、
そして遠く、遠く、
ひときわ大きなマストがこの距離でも目立つ、あの船は。

「ラッキーだわ。私、乗せてもらおうかしら!」

巨大海賊船マール・デ・ドラゴーン。
僕らを導いた、僕らの友人たちが走らせる、懐かしい船。

「まだ遠いよ。」

僕はそう言ったけれど、
あの海賊船がものすごく速くて、
あっという間に近海にその勇壮な姿を現すことを知っていた。

マリベルはわくわくして言った。

「あの総領さん、元気かしら。ボロンゴさんや皆も!」


僕はキャプテン・シャークアイの姿を思い描く。
あの人は、いつだって元気だ。
ただ一度最後の別れの時、まるで無理に笑っているように見えただけ。

忘れられない。
あの長い髪を潮風になびかせる姿、
朗々と響きわたる、明るい笑い声を。


僕は再び背中を砂につけたが、ドキドキし始めた胸の高鳴りはやまず、
さっきのようなのんびりした気分にはとても戻れなかった。
腕の紋章まで、何だか疼くみたい。

「ねえマリベル、うちでご飯食べてこようよ。」
「なあにアルス、お腹すいたの?」
「食べて戻ってきたらちょうどいいくらいだよ、たぶん。まだあんなに遠いし。」
「……それもそうね。」

マリベルはそう言って僕より先にさっさと立ち上がった。


オレンジ色のドレスについた砂を、
「ん。」というふうに無言で僕に見せつける。
つんと上を向いた顎。
僕は隣に立って、ドレスの砂を丁寧に払ってあげる。

マリベルは時々、ご飯時や夕暮れにも、村に戻りたくないと言い出す。
その彼女が朝昼晩とちゃんとご飯を食べるようにしむけるのが、
最近の僕のつとめの一つだった。

こうしているうちにどのくらいあの海賊船は近づいただろう、と、
僕はそんなことを考えながら自分の家に戻った。



「おかあさーん、ごはん」
「あら、マリベルお嬢様、いらっしゃい」
「こんにちは、マーレおばさま。」

マリベルはお母さんに挨拶をしてから、

「ちょっと、アルス、いつまでも子供っぽいんだから!」

と耳元で小言を言って僕を小突いた。
それは僕のお母さんにも聞こえてしまったらしく、お母さんを笑わせた。

テーブルにはボルカノ父さんの姿があって、
僕らを見ると、

「おう、あの人の船が来てるな!」

と言った。

「いつ頃来るかなあ?」
「昼飯を食ったらちょうどいいだろうさ。今から海に出る連中は、そうだな、どのへんで行き会うかな?」
「あたし、乗るわ。」

マリベルは急き込むようにそう言ってからお母さんの出した海料理をぱくつき、

「おばさま、これとっても美味しい!」

と叫んだ。
僕もお料理に手を伸ばしながら、窓の外を見る。
マール・デ・ドラゴーンの姿を認めた港が興奮にざわめいているのが、
ここからでもわかった。


食後のお茶を飲んでいると、
突然ドオン!!と、ものすごい轟音がした。
びりびりとしびれるような衝撃に僕らはびっくりし、それから顔を見合す。

来たのだ。
マール・デ・ドラゴーンの空砲だ。

港のほうで歓声が上がっている。
フィッシュベルの漁師たちはみな、あの海賊たちが大好きだ。

「びっくりしたあ、思ったよりずっと早かったね」
「ははは、あの空砲なぁ、魚が逃げて困るんだ」

ボルカノ父さんは苦笑してそう言ったけれど、
嬉しそうで、ちっとも困った様子には見えなかった。
お母さんがテーブルにこぼれた紅茶を拭く。

全員で家の外に出て、真っ青な海に聳え立つ船を僕らは見つめた。
白い巨大な帆が、青い空にくっきりと際立つ。
染め抜かれた水の紋章。

海賊たちの姿や声はここまでは届かなかったけれど、
僕はその船の一番前に、きっとあのシャークアイが佇んでいるのだろうと思った。

長いマントをなびかせて、
楽しそうに、やさしそうに微笑んでいるのだろう。
最近僕は鏡を見ている時、ふとあのキャプテンの顔を思い出す。


マール・デ・ドラゴーンはしばし僕らに挨拶するようにその場にとどまり、
それからゆっくりと舵を巡らせた。

「あら、今日はフィッシュベルに寄ってくれないの!?」

マリベルが残念そうに叫んだ。
その隣でマーレお母さんが、少しほっとしたような顔を見せた。


「マリベル。城下町に行こうよ。」

僕がそう誘うと、
マリベルはちょっと考えてから、

「そうね。行くわよアルス!」

と言って、
僕の袖を引っ張った。


* * * * * *

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自己紹介:
ゲーム大好きモル元です。

9のプレイも一段落ついて、そろそろ7小説に戻ろうか、と書き始めた途端、シャークアイの知名度や活動人口の少なさを再び思い知って打ちひしがれている今日この頃です。皆さんにシャークアイのことを思い出してもらったり、好きになってもらうために、めげずに頑張って書いていきます!

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