ドラゴンクエスト7の小説ブログです。
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目が覚めたら、猫になっていた。
真っ黒な尻尾を見つめながら、オレはそれが自分自身のものである事実を何度も疑った。それは意のままに目の前を往復し、そしてその動きだけでいくらでも時を慰める。しかし、そうそううまくいくはずがないじゃないか。ただ眠り、目覚めただけで猫になれると? きっとこれは夢だ。
柔らかなベッドを離れる。床との高さと感触の違いは楽しく、ここが格好の遊び場だと一瞬で理解した。ミントは躾された猫だから勝手に飛び乗ったり飛び降りたりはしないが、普通の猫なら必ず関心を示すだろう。とん、と床に両手を着く、部屋に響くはずの衝撃音がオレ自身の肉体の柔軟さによってかき消されることには感動せずにいられない。足音を忍ばせドアへと向かう、漆黒の小さな姿が姿見の中を横切って行った。
海風。
くん、と自然に鼻が動いた。
全身の毛並がなびく。
オレはひそやかな足取りで長い階段を降り、甲板に出て、そこで働く海賊たちの足の間を縫っていく。
強烈な魚のにおい。海と人のざわめき。
ふと、誰かの温かい両手が、背後からオレをぐいと持ち上げた。何とも言えない浮遊感は不快であるようでいて妙に心地良い。耳元で男たちの会話が聞こえた。この船で働く全員をオレは把握しているはずだが、猫の耳では、誰の声だか判別出来なくなっていた。
――おい、こんな黒い猫、前から船にいたか?
――さあ、そういや見かけねえ気もするなあ。
――白いのと茶色っこいトラジマはこのあたりでよく見るけどな?
――おまえって猫好きだなあ! その黒猫が気に入ったのか?
――だってなあ、さっきからこの猫っことすれ違った猫がよ、止まってこいつを振り返ってんだよな。面白いなあ。何だろうなあ。
――へーえ、そんなことがあるもんなのか? …何だか随分キレイな猫だな。オスか?
「うにゃあ!」
くわっと口を開いて一声威嚇すると、男たちはオレを手放した。
急に放されたって着地はきれいだ。
オレは人間たちをほったらかして、四つ足で船尾を目指す。
愛猫ミントの姿はコンテナの陰に見つかった。
「にゃあん」
「にゃあー」
ミントはオレを認めると、可愛い頭を擦り寄せてきた。
とてもいいにおいがする。
――御主人さま、猫になったんですか?
――いや、そういう話は聞いたことがないし、たぶんこれはオレの夢だろう。でも嬉しいよ、いつか猫になってお前と遊んでみたいと思っていた。ずっと。
――これは一時の夢?
――きっとそうだろう。
――御主人さまの夢じゃなくて、私の夢かもしれない。
ミントはそう語ると、幸せそうな微笑を浮かべた。人間の目には分からない表情。両眼を開いた猫の顔がはっきり笑うのを、オレは初めて見ることができた。
――――――――――
お題はこちらのサイト様から頂きました
「うたかた遊び」様
(1)としてありますが、別のお話を書こうかなーと思っているので、
続きはありません。
真っ黒な尻尾を見つめながら、オレはそれが自分自身のものである事実を何度も疑った。それは意のままに目の前を往復し、そしてその動きだけでいくらでも時を慰める。しかし、そうそううまくいくはずがないじゃないか。ただ眠り、目覚めただけで猫になれると? きっとこれは夢だ。
柔らかなベッドを離れる。床との高さと感触の違いは楽しく、ここが格好の遊び場だと一瞬で理解した。ミントは躾された猫だから勝手に飛び乗ったり飛び降りたりはしないが、普通の猫なら必ず関心を示すだろう。とん、と床に両手を着く、部屋に響くはずの衝撃音がオレ自身の肉体の柔軟さによってかき消されることには感動せずにいられない。足音を忍ばせドアへと向かう、漆黒の小さな姿が姿見の中を横切って行った。
海風。
くん、と自然に鼻が動いた。
全身の毛並がなびく。
オレはひそやかな足取りで長い階段を降り、甲板に出て、そこで働く海賊たちの足の間を縫っていく。
強烈な魚のにおい。海と人のざわめき。
ふと、誰かの温かい両手が、背後からオレをぐいと持ち上げた。何とも言えない浮遊感は不快であるようでいて妙に心地良い。耳元で男たちの会話が聞こえた。この船で働く全員をオレは把握しているはずだが、猫の耳では、誰の声だか判別出来なくなっていた。
――おい、こんな黒い猫、前から船にいたか?
――さあ、そういや見かけねえ気もするなあ。
――白いのと茶色っこいトラジマはこのあたりでよく見るけどな?
――おまえって猫好きだなあ! その黒猫が気に入ったのか?
――だってなあ、さっきからこの猫っことすれ違った猫がよ、止まってこいつを振り返ってんだよな。面白いなあ。何だろうなあ。
――へーえ、そんなことがあるもんなのか? …何だか随分キレイな猫だな。オスか?
「うにゃあ!」
くわっと口を開いて一声威嚇すると、男たちはオレを手放した。
急に放されたって着地はきれいだ。
オレは人間たちをほったらかして、四つ足で船尾を目指す。
愛猫ミントの姿はコンテナの陰に見つかった。
「にゃあん」
「にゃあー」
ミントはオレを認めると、可愛い頭を擦り寄せてきた。
とてもいいにおいがする。
――御主人さま、猫になったんですか?
――いや、そういう話は聞いたことがないし、たぶんこれはオレの夢だろう。でも嬉しいよ、いつか猫になってお前と遊んでみたいと思っていた。ずっと。
――これは一時の夢?
――きっとそうだろう。
――御主人さまの夢じゃなくて、私の夢かもしれない。
ミントはそう語ると、幸せそうな微笑を浮かべた。人間の目には分からない表情。両眼を開いた猫の顔がはっきり笑うのを、オレは初めて見ることができた。
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(1)としてありますが、別のお話を書こうかなーと思っているので、
続きはありません。
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モル元
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自己紹介:
ゲーム大好きモル元です。
9のプレイも一段落ついて、そろそろ7小説に戻ろうか、と書き始めた途端、シャークアイの知名度や活動人口の少なさを再び思い知って打ちひしがれている今日この頃です。皆さんにシャークアイのことを思い出してもらったり、好きになってもらうために、めげずに頑張って書いていきます!
シャークアイ関連の雑談やコメントなど随時募集中。お気軽に話しかけてやって下さい。世の中にシャークアイの作品が増えるといいなと思って活動しています。
シャークアイ、かっこいいよね!
9のプレイも一段落ついて、そろそろ7小説に戻ろうか、と書き始めた途端、シャークアイの知名度や活動人口の少なさを再び思い知って打ちひしがれている今日この頃です。皆さんにシャークアイのことを思い出してもらったり、好きになってもらうために、めげずに頑張って書いていきます!
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