ドラゴンクエスト7の小説ブログです。
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長くなったので畳みます。
カデルとシャークアイ。
(2)としてありますが、続きものではなく、同じ題で別のお話を書いています。
よろしければ、こちらもどうぞ。
設定が同じです。内容の時系列では、「星が降る~」が先です。
「潰えた光」 (シャークアイとボロンゴ)
カデルとシャークアイ。
(2)としてありますが、続きものではなく、同じ題で別のお話を書いています。
よろしければ、こちらもどうぞ。
設定が同じです。内容の時系列では、「星が降る~」が先です。
「潰えた光」 (シャークアイとボロンゴ)
お前のような相棒がいてくれて本当に嬉しいと、シャークアイはかつて死を前にして素直に心情を吐露したが、カデルは結局、自分には舵を取ることしか出来ないと思っていた。何か思い悩んでいる時には二人の間には急に高く厚い壁がそびえ、シャークアイはその向こう側にいるのだ。人の上に立つべく選ばれた者は皆そうなのかもしれない。壁の向こう側に行けるのはカデルではなくて、いまは亡きシャークアイの父や妻、あるいは…… 少なくとも、舵取りカデルでは、そこには辿り着けない。
冷たい夜風に髪を靡かせ、シャークアイが舵まで登って来た。コンコン、とまるで扉をノックするように木の壁を叩いてカデルを振り返らせる。カデルは一人、毛布にくるまって座り、煙草をふかしているところだった。
「シャークの旦那。どうしたんです、こんな夜更けに。」
「ひとりか、カデル? 入れてくれ。」
寒い夜なのにシャークアイの夜着は薄かった。風の冷たさに身を震わせながら、少し悪戯そうに笑い、カデルの隣に潜り込む。カデルは煙草の火を床に投げ落とし、ブーツの踵で消した。
「ああ、すまんな。」
シャークアイが謝った。冷えた長い髪がカデルの肩に触れる。毛布は大の大人を二人包むには小さすぎて、手や足や肩がはみ出した。
「旦那、それは?」
カデルはシャークアイの腕の中を指した。どう見ても、丸められた別の毛布だったから。
「ああ、これは少し待ってくれ。」
シャークアイはそう言うと、腕の中の毛布をくるりと開いた。ゆるく巻かれた中から灰色っぽい猫が一匹出てきてにゃあんと鳴いた。
「うわっ、平気なんですかい、スマキなんかにして。」
「はっはっは! オレはまくのがうまいから大丈夫。」
シャークアイは小さな頭に手を伸ばしたが、猫はその施しに応えず、とっ、とっ、と愛らしい足音を立てながら階段を降りて去っていった。つんと立った尻尾の行く先をカデルの目が追った。
「何だ、せっかく連れてきたのに。」
「いいんですかい? 追ってきましょうか?」
「いや、構わんよ。」
「猫ってのは急にいなくなりますなあ。寂しくねえんですか、飼ってるもんは?」
「好きにさせてやるしかないさ。それよりも、まだあるんだ。」
毛布から、猫に続いて小さな酒瓶が二つ、ころりと出てきた。
「少し飲まないか、カデル? 寒い夜には煙草より効くぞ。」
カデルは礼を言って小瓶を受け取った。シャークアイのほうが先に、自分の瓶を唇に寄せて中身を舐めた。よく見るとそちらのほうが幾分か減っているので、ここに来る前にも飲んでいたのだろう。カデルは主人に倣って瓶に口をつけ、危うく噎せそうになった。
「う~っ、きっついですなあ!」
カデルは眉をしかめた。その情けない声に、シャークアイが笑った。
「ツマミもあるんだ。」
「何ですか、酒盛りに来たんですか。」
鞄代わりの中身はそれで全部だったらしく、シャークアイは改めて毛布を広げて二人の背中を包んだ。船長室から持ち出してきただけあって、たっぷりと大きく、分厚く、温かい。小さな箱に入った肴は木の実だった。凝った料理ではないが、カデルには普段より贅沢な味がした。
「美味いですな。海のもん以外のツマミってのは珍しい気がしまさあ。どこで採れたので?」
「この船。ここの下。」
「へぇ。うまく育ちましたな。」
ぐい、と酒瓶を煽ると、腹まで一気に、かあっと熱くなる。カデルが日常飲むのはもっと量が多くて、もっと雑な酒だ。小瓶のラベルをカデルは眺めてみたが、星々の光だけを頼りには読み取ることができなかった。この時代の、世界のどこからか仕入れてきたものなのだろう。勇者たちをどこかへ送り届けたときの、ささやかな輸入品の一つとして。
「今頃どのへんでしょうねえ。アルス様たちは。」
「陸路で砂漠を行くと言っていた。」
「へぇ、そりゃアツそうですなあ。アルス様たちが船にいると賑やかで楽しいですな。いないと寂しくなりまさあ。」
「そうだな。」
シャークアイは俯いて酒を舐めた。木の実を齧る、コリ、という音が小さく聞こえた気がした。二人分の体温は寒い夜に優しく交じるようだ。違和感を失った柔らかな髪の温度が、ふいにカデルの肩にもたれた。
「カデル、ここで眠らせてくれ。」
「寒くねえんですか?」
「うん。戻るのも面倒だ。眠い。」
「…何か、元気ねえんですか、旦那?」
シャークアイの頭が、ぴくりと動いた。わずかに顔を上げ、ふっと醒めたような眼を向ける。カデルは一瞬呼吸を失った。思わず口をついた一言だっただけに、その瞬間にあの恐ろしい壁が突如姿を現したことにぞっとした。
間近にあって永遠に拒絶するその瞳。どれだけ長い間そばにいてもこのざまだ。心が押しつぶされそうになる。カデルは慌てて言葉の続きを探した。嘘の理由、何か、主人を追い詰めない言い訳を。
「いえ、あー…すぐ寝ちまうから。」
シャークアイが少し笑った。ほっとしたのは、カデルも同じだ。
「今夜は少し酔ったから。すまんな、酒盛りが出来なくて。」
満天の星から目をそらすように伏せられた瞼、睫の影が頬に落ちて不安定に揺らめき、憂鬱に似た表情を作っていた。
「そりゃ構わねえですけど、シャークアイ様、冷えねえで下さいよ。」
「心配ない。あたたかいよ。」
しだいに脱力して重く寄りかかる体重をうまく抱きとめ、カデルはシャークアイを床に寝かせた。枕になるものがない。壁際に転がる布袋では、いかにもシャークアイには不釣り合いに思えた。カデルはもともと被っていた毛布で自分ひとりの身体を包み直し、せめて風上を選んで主人のそばに座った。
居心地のよい部屋を抜け出して、なぜ彼がこんなところまで眠りに来たのかがわからない。雑談を楽しむために訪れることはこれまでもあったけれど、それとは明らかに違った。何か、元気がないのだろうか? 何か、思い悩むことでも? でなければ、どうしてこんなところへ?
だがカデルがそれを口にしたら、答えを言えないシャークアイは追いやられて逃げてしまうだろう。本当の理由、肝心なことを聞く力をもたないカデルの罪だった。急激にあたりの空気の凍えるようなあの感覚を思い出すと胸がきりきりと痛んだ。何かもっと主人のために出来ることがあればいいのに。追及の言葉を引っ込めて、せめて彼の好きなように振る舞わせることしかできない。
きつい酒をぐっと口に含み、自ら喉を灼く。北国の冷たく冴えわたる清廉な星空を、なぜシャークアイが愛さなくなったのか、カデルには、わからない。
――――――――――
お題はこちらのサイト様から頂きました
期間限定様
冷たい夜風に髪を靡かせ、シャークアイが舵まで登って来た。コンコン、とまるで扉をノックするように木の壁を叩いてカデルを振り返らせる。カデルは一人、毛布にくるまって座り、煙草をふかしているところだった。
「シャークの旦那。どうしたんです、こんな夜更けに。」
「ひとりか、カデル? 入れてくれ。」
寒い夜なのにシャークアイの夜着は薄かった。風の冷たさに身を震わせながら、少し悪戯そうに笑い、カデルの隣に潜り込む。カデルは煙草の火を床に投げ落とし、ブーツの踵で消した。
「ああ、すまんな。」
シャークアイが謝った。冷えた長い髪がカデルの肩に触れる。毛布は大の大人を二人包むには小さすぎて、手や足や肩がはみ出した。
「旦那、それは?」
カデルはシャークアイの腕の中を指した。どう見ても、丸められた別の毛布だったから。
「ああ、これは少し待ってくれ。」
シャークアイはそう言うと、腕の中の毛布をくるりと開いた。ゆるく巻かれた中から灰色っぽい猫が一匹出てきてにゃあんと鳴いた。
「うわっ、平気なんですかい、スマキなんかにして。」
「はっはっは! オレはまくのがうまいから大丈夫。」
シャークアイは小さな頭に手を伸ばしたが、猫はその施しに応えず、とっ、とっ、と愛らしい足音を立てながら階段を降りて去っていった。つんと立った尻尾の行く先をカデルの目が追った。
「何だ、せっかく連れてきたのに。」
「いいんですかい? 追ってきましょうか?」
「いや、構わんよ。」
「猫ってのは急にいなくなりますなあ。寂しくねえんですか、飼ってるもんは?」
「好きにさせてやるしかないさ。それよりも、まだあるんだ。」
毛布から、猫に続いて小さな酒瓶が二つ、ころりと出てきた。
「少し飲まないか、カデル? 寒い夜には煙草より効くぞ。」
カデルは礼を言って小瓶を受け取った。シャークアイのほうが先に、自分の瓶を唇に寄せて中身を舐めた。よく見るとそちらのほうが幾分か減っているので、ここに来る前にも飲んでいたのだろう。カデルは主人に倣って瓶に口をつけ、危うく噎せそうになった。
「う~っ、きっついですなあ!」
カデルは眉をしかめた。その情けない声に、シャークアイが笑った。
「ツマミもあるんだ。」
「何ですか、酒盛りに来たんですか。」
鞄代わりの中身はそれで全部だったらしく、シャークアイは改めて毛布を広げて二人の背中を包んだ。船長室から持ち出してきただけあって、たっぷりと大きく、分厚く、温かい。小さな箱に入った肴は木の実だった。凝った料理ではないが、カデルには普段より贅沢な味がした。
「美味いですな。海のもん以外のツマミってのは珍しい気がしまさあ。どこで採れたので?」
「この船。ここの下。」
「へぇ。うまく育ちましたな。」
ぐい、と酒瓶を煽ると、腹まで一気に、かあっと熱くなる。カデルが日常飲むのはもっと量が多くて、もっと雑な酒だ。小瓶のラベルをカデルは眺めてみたが、星々の光だけを頼りには読み取ることができなかった。この時代の、世界のどこからか仕入れてきたものなのだろう。勇者たちをどこかへ送り届けたときの、ささやかな輸入品の一つとして。
「今頃どのへんでしょうねえ。アルス様たちは。」
「陸路で砂漠を行くと言っていた。」
「へぇ、そりゃアツそうですなあ。アルス様たちが船にいると賑やかで楽しいですな。いないと寂しくなりまさあ。」
「そうだな。」
シャークアイは俯いて酒を舐めた。木の実を齧る、コリ、という音が小さく聞こえた気がした。二人分の体温は寒い夜に優しく交じるようだ。違和感を失った柔らかな髪の温度が、ふいにカデルの肩にもたれた。
「カデル、ここで眠らせてくれ。」
「寒くねえんですか?」
「うん。戻るのも面倒だ。眠い。」
「…何か、元気ねえんですか、旦那?」
シャークアイの頭が、ぴくりと動いた。わずかに顔を上げ、ふっと醒めたような眼を向ける。カデルは一瞬呼吸を失った。思わず口をついた一言だっただけに、その瞬間にあの恐ろしい壁が突如姿を現したことにぞっとした。
間近にあって永遠に拒絶するその瞳。どれだけ長い間そばにいてもこのざまだ。心が押しつぶされそうになる。カデルは慌てて言葉の続きを探した。嘘の理由、何か、主人を追い詰めない言い訳を。
「いえ、あー…すぐ寝ちまうから。」
シャークアイが少し笑った。ほっとしたのは、カデルも同じだ。
「今夜は少し酔ったから。すまんな、酒盛りが出来なくて。」
満天の星から目をそらすように伏せられた瞼、睫の影が頬に落ちて不安定に揺らめき、憂鬱に似た表情を作っていた。
「そりゃ構わねえですけど、シャークアイ様、冷えねえで下さいよ。」
「心配ない。あたたかいよ。」
しだいに脱力して重く寄りかかる体重をうまく抱きとめ、カデルはシャークアイを床に寝かせた。枕になるものがない。壁際に転がる布袋では、いかにもシャークアイには不釣り合いに思えた。カデルはもともと被っていた毛布で自分ひとりの身体を包み直し、せめて風上を選んで主人のそばに座った。
居心地のよい部屋を抜け出して、なぜ彼がこんなところまで眠りに来たのかがわからない。雑談を楽しむために訪れることはこれまでもあったけれど、それとは明らかに違った。何か、元気がないのだろうか? 何か、思い悩むことでも? でなければ、どうしてこんなところへ?
だがカデルがそれを口にしたら、答えを言えないシャークアイは追いやられて逃げてしまうだろう。本当の理由、肝心なことを聞く力をもたないカデルの罪だった。急激にあたりの空気の凍えるようなあの感覚を思い出すと胸がきりきりと痛んだ。何かもっと主人のために出来ることがあればいいのに。追及の言葉を引っ込めて、せめて彼の好きなように振る舞わせることしかできない。
きつい酒をぐっと口に含み、自ら喉を灼く。北国の冷たく冴えわたる清廉な星空を、なぜシャークアイが愛さなくなったのか、カデルには、わからない。
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HN:
モル元
性別:
女性
自己紹介:
ゲーム大好きモル元です。
9のプレイも一段落ついて、そろそろ7小説に戻ろうか、と書き始めた途端、シャークアイの知名度や活動人口の少なさを再び思い知って打ちひしがれている今日この頃です。皆さんにシャークアイのことを思い出してもらったり、好きになってもらうために、めげずに頑張って書いていきます!
シャークアイ関連の雑談やコメントなど随時募集中。お気軽に話しかけてやって下さい。世の中にシャークアイの作品が増えるといいなと思って活動しています。
シャークアイ、かっこいいよね!
9のプレイも一段落ついて、そろそろ7小説に戻ろうか、と書き始めた途端、シャークアイの知名度や活動人口の少なさを再び思い知って打ちひしがれている今日この頃です。皆さんにシャークアイのことを思い出してもらったり、好きになってもらうために、めげずに頑張って書いていきます!
シャークアイ関連の雑談やコメントなど随時募集中。お気軽に話しかけてやって下さい。世の中にシャークアイの作品が増えるといいなと思って活動しています。
シャークアイ、かっこいいよね!
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