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ドラゴンクエスト7の小説ブログです。 9プレイ日記もあります。
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ステンドグラスを嵌め込んだ窓の向こうは闇。でもきっとあの少年は近くにいるのだろうと思いながら、神父はひとり聖書の頁を捲った。ここはフィッシュベルの小さな教会、昼には村の人々が祈りを捧げに訪れるが、翌日の漁に備える漁村の夜は早く、こんな暗闇のなか浜辺を逍遥し教会をたずねるのは、まだ仕事のない少年くらいのものだった。

コトリ、と小さな物音がしたのを聞き取り、神父は顔を上げた。続いて、ギィと扉の開く音。

「アルス。やっぱり来たか。」

神父は微笑を湛えた瞳で少年を迎えた。漁師ボルカノのせがれ、アルスだ。遠慮がちな足取りで長椅子の間を渡ってくる。

「神父さま。」
「どうしたアルス、こんな夜更けに。また海の向こうの話かな?」

アルスは恥ずかしそうに頷いた。毎晩のように話しに来るので、最近では神父はほとんどアルスを待つためだけに夜更かしをして聖典を読んだ。

「分かるとも、アルス。海の向こうに何かがあると、若者ならば誰もが思うだろう。」

この世界に、エスタード島がたったひとつ。人間はこの村とグランエスタード城だけに住む。それが全世界であとは海だと言われて育っても、若者は簡単には納得しない。それは当然のことで、どんな老人も若かりし頃一度は海の向こうにまったく別の島の存在を疑ったのだ。

「私も昔はそう思った。誰でもそう考えるものだ。しかし、エスタードが全てなのだよ。」

何度そう告げても、アルスの眼は好奇心に輝き、うずうずと冒険を夢見ていた。

「神父さま、昔、船を作って海に出たんでしょう? その話を聞かせて下さい。」
「そりゃ出るには出たさ、船をこしらえてね。陸が見えると信じて。しかし実際のところは、どこまで行っても、やっぱり海だったのだよ。」
「ほんとうに?」
「本当さ。」

神父は同情のまなざしを向けた。若かったあの日々、アルスと同じように期待をもって旅立ち、しかし永遠に続く海に絶望し、そしてついに外界を諦めた。その時はひどく意気消沈したものだったが、一方で、大人たちの言った世界の姿を自分の目で確かめたことで、納得もした。しかしアルスのきらきら光る目を見ていると、彼にまでそんな時期が来てしまうことは惜しい気がした。特に最近のアルスはキーファ王子といつも一緒に外遊びに出かけて楽しそうだ。その彼らが傷つくところ、冒険を諦める様子を想像すると胸が痛んだ。

「色々と考えたり見て回ることも悪くないだろう。しかしアルス、くれぐれも両親に心配をかけてはいけないよ。」

アルスは素直に頷いた。

「いい子だ。さ、もう家に戻りなさい。」

アルスは丁寧にお辞儀をして教会を後にした。開いた扉の向こう側から打ち寄せる海の音が聞こえてくる。いつの世も、その海の果てに若者の思いは募るばかりだ。アルスの顔を見ていると、時々、かつての外界への憧れが蘇ってくるような気がした。もう一度かなたに夢を見てしまいそうだ。

扉が閉まり、波音は遠ざかった。神父はそっと聖書を閉じ、過去に思いを馳せた。ずっと昔、旅を試みたあの船、風を孕んだ帆が、脳裏にふわりと思い出された。


――――――――――
お題はこちらのサイト様から頂きました
「Scorpion」様


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ゲーム大好きモル元です。

9のプレイも一段落ついて、そろそろ7小説に戻ろうか、と書き始めた途端、シャークアイの知名度や活動人口の少なさを再び思い知って打ちひしがれている今日この頃です。皆さんにシャークアイのことを思い出してもらったり、好きになってもらうために、めげずに頑張って書いていきます!

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