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ドラゴンクエスト7の小説ブログです。 9プレイ日記もあります。
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「ん?」

物影にぴくりと動く何かを見つけて、カデルは足を止めた。

「いま、何か動かなかったか?」

まさか、魔物だろうか? マール・デ・ドラゴーンは今日の戦闘を終え、船員たちは皆休憩に入ったところだ。点呼の時、異常がないか確認したはずだが、見落としがあったのかもしれない。

カデルは腰のナイフに手を添え、そろりそろりと用心深く近づいていった。樽の陰に、確かに何かが隠れている。猫ではないことは、半透明の、つるりとした太い紐のようなものがはみ出していることから明らかだった。カデルは思い切って樽を蹴飛ばして叫んだ。

「なにものだっ!」
「ピッピキーッ!!」
「!! なんだ…っ、スライムじゃないか!」

カデルは肩すかしを食らい、ナイフから手を離した。一般の船員ならともかく、海賊のカデルにとっては、スライムなど敵ではない。目の前にはいかにも弱そうな小さなスライムが、ぷるぷると震えていた。

「なんだよ、びびらせやがってっ! このマール・デ・ドラゴーンでコソコソしていいこたぁねえぞ!!」
「ピキッ。ぼっ、ぼくはスライムじゃないよ、くらげだよっ!」
「どっちでも同じだっ!」
「そっ、それに、悪いくらげじゃないよ!!」
「ばかやろう、悪くねえモンスターがいるかってんだ!」

カデルはスライムの角をぎゅむっと掴んで吊り上げた。よく見ると確かにスライムではないようだ。色が薄いし、たくさんの触手が生えていた。さっき樽の陰からはみ出していた半透明の紐の正体だ。欠けた触手の先から、魔物の青い体液が、ぽたっ、と船の床にこぼれた。

「まったく、こんな雑魚が、どうやって入りやがったんだか。」
「いたいよう、はなしてよう。」
「カデル? どうかしたの?」

背後から可愛らしい声をかけられ、カデルはびっくりして振り返った。こともあろうにキャプテン・シャークアイの妻アニエスが、騒ぎを聞きつけ、ドアの近くに立っていた。

「奥様! 近づいちゃいけません!」
「あら、スライムなの!?」
「くらげだそうで。しかし、小さくても魔物は魔物ですよ。」
「ぼっ、ぼくは悪いくらげじゃないよう! しびしびもしないよう!」
「まあ、そうなの!?」

アニエスはカデルの隣まで来て、くらげを覗きこんだ。

「アニエス様! 危ないですって!」
「でも…カデル、この子、怪我してるわ。」
「ぼく、おっきなサメのせなかにくっついてたんだよう。そしたら人間たちと戦いになって…。」
「あー、そういや、見たような気がするなあ。」

カデルは今日の戦闘を思い出した。確かに魔物のむれの中から、小さな何かが飛び出すのを見た覚えがある。その時は水飛沫かとも思ったのだが、このくらげだったのだ。

「巻き込まれて、怪我してしまったのね。手当てしてあげましょう。」
「触ってはいけません。するならカデルが代わりにしますから。」
「いいのよカデル。悪い子じゃないんだわ。大丈夫よ、ね?」

アニエスはくらげに向かってそっと手を伸ばした。くらげはぷるぷる震えながら、優しいその腕の中に収まった。

「ピキィ…水が欲しいよう……」
「よしよし、手当てをしたら、すぐに海に戻してあげましょう。」
「さいきん、海が、怖いよう……」

アニエスは黙ってくらげの頭を撫でた。カデルもくらげの泣き言には内心どきりとして言葉を失った。アニエスを見ると、やはり少し傷ついたような顔をしていた。

「…ごめんね、あなたみたいな、優しいくらげちゃんもいるのにね。」

アニエスは大事そうにくらげを抱いた。怪我をしている場所からくらげの体液がこぼれ、きれいなアニエスの服に青いシミをつけてしまう。

「ごめんね。くらげちゃん。ごめんね。」
「ピキー……」
「…あーあ、しょうがねえなあ、アニエス様は! 行きましょうや、医者のところまでお供しまさあ。」
「ありがとう、カデル!」
「けどなあ、内緒にして下さいよ。でないと、おれがキャプテンに怒られまさ。」

カデルはあたりの様子をうかがって、人けのないことを確かめた。アニエスの手を取る代わりに、くらげの手を一本掴んで、ドアの外へと導く。アニエスに抱かれて安心したのだろう、その触手はもう、出会った時のように震えてはいなかった。




――――――――――
コスタール海軍時代のお話でした。

人魚時代のアニエスがくらげと仲良くしているお話
→「涙のゆくえを君は知っていますか?


お題はこちらのサイト様から頂きました
http://odai.ninja-x.jp/title/index.html


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ゲーム大好きモル元です。

9のプレイも一段落ついて、そろそろ7小説に戻ろうか、と書き始めた途端、シャークアイの知名度や活動人口の少なさを再び思い知って打ちひしがれている今日この頃です。皆さんにシャークアイのことを思い出してもらったり、好きになってもらうために、めげずに頑張って書いていきます!

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