ドラゴンクエスト7の小説ブログです。
9プレイ日記もあります。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
「この雨では出航は取り止めだな。」
コスタールの港から海を眺め、シャークアイが呟いた。カデルは倉庫の裏にいたが、火のつかぬ煙草を諦め、主人のところまで戻ってきた。
「キャプテン。結論は出ましたかい?」
「うん。やはりやめておこう。」
カデルは空とも海ともつかぬ灰色の世界に視線を投げた。遠くの船は雨に輪郭をかき消され、マール・デ・ドラゴーン号も、ぼんやりと黒っぽい影にしか見えない。
「午後までに止むと思ったんですがなあ。まあ、仕方ないですな。」
「出航を希望していた貿易船には、明日以降にしてもらおう。コスタールを出るまでは護衛出来ても、その後が危険だからな。」
「そうですね。急いでいるようでしたが、安全が一番でさ。」
毛羽立つ陰気な海に、繋がれた幾艘かの船が上下している。気の滅入る天候にため息をついたカデルを見て、シャークアイは笑った。
「悩んでも仕方ない。われわれも一日休養しよう。」
出来れば本日の出航を、と希望していた貿易船のため、雨の降り始めた昨夜から今日の午前中にかけて、シャークアイとカデルは空模様を眺め続けていた。そのせいで気疲れはしていたが、しかし船が出ないとなれば残りの半日、海賊たちのめったにない休養に充てることが出来る。
「カジノでも行くか、カデル?」
「キャプテンは?」
「そうだな。オレは、まずは城に戻ろう。」
倉庫の屋根に跳ねる雨音が激しくなった。シャークアイはカデルと別れ、ひとりコスタール城を目指した。街中には伝令を待つ海賊たちが暇を持て余していた。シャークアイの姿を見ると、彼らは皆、顔を上げた。
「キャプテン! どうなりました!?」
「やはり今日は出られぬ! お前たち、一日休んでくれ!」
「やった。」
海賊たちから歓声があがった。こんな雨でも休養となれば、昼から酒を飲み、コスタール王が用意した王立カジノで遊ぶことが出来る。
「じゃ、さっそくカジノに行っても?」
「行ってくれ。」
シャークアイは笑った。マール・デ・ドラゴーンは今やコスタール国防の要、すっかり日々の戦闘に責任をもつようになった船員たちだが、たまには昔のように、気ままに遊ばせてやりたい。
「キャプテンは?」
「オレは一度城に戻る。仲間を見たらよろしく伝えてくれ。」
カジノに向かう海賊たちに混じり、シャークアイは城を目指した。待つ人を思うと、思わず小走りになる。心はすでに城にあったから、目の前に立ちふさがるまでボロンゴの姿に気づかなかった。シャークアイは驚いて足を止め、ボロンゴを見た。呼吸を乱して先を急ぐシャークアイを、ボロンゴは不思議そうに見た。
「キャプテン、何かあったので?」
「ボロンゴ、お前も船を降りていたのか。今日は休みだ、自由にやってくれ。」
「キャプテンは?」
シャークアイははにかんで言葉を濁した。
カジノや酒場に向かう船員たちの間をすり抜け、石造りの道を走る。急ぐ姿は、人から見れば、雨避けの屋根を求めているように見えるだろう。頭からかぶっていたコートが風に脱げて、火照った頬に冷たい雨粒が伝った。
毎日は忙しく、危険な海に連れていくことも出来ず、こうして長い時間を約束されることは久しぶりだった。喜ぶ人の姿を思い描くと、それだけで胸があたたかくなる。
足元に水を跳ねさせて近づいてくるシャークアイの姿に門番たちは戸惑いの表情を浮かべた。
「シャークアイ様! 何かありましたか?」
「いやいや何もない。今日の出航は取り止めになった。船の者は一日休みにした。」
「そうでしたか。この雨ですからね。では、シャークアイ様も久しぶりにご休養ですね。」
「そういうわけだ。通してくれ。」
「はあ、皆さん昼からカジノですね、いいなあ。といっても僕は普段から交替で休みをもらっている身ですが…」
長話の若い門番にシャークアイは苦笑した。
「すまないがオレは急いでいるのだ。焦らさないで通してくれないか?」
「あっ、すみません、どうぞ! お急ぎのご用事でしたか、どちらへ?」
また同じ質問だ。シャークアイは開かれた門をくぐりながら、門番に答えた。
「早く、妻のところへ。」
――――――――――
雨の音を聞きながらアニエスが窓の外を眺めて「こんなお天気で大丈夫なのかしら?」と心配していると、シャークアイがやってきて「今日は休みだ! 一日アニエスといられるよ!」って言っているのを想像すると可愛いなーって思って書きました。いつまでも新婚さんみたいな二人だと思います。
シャークアイが好きすぎるモル元にはアニエスは羨ましくもあるのですが、でも愛妻家なシャークアイが好きです!
お題はこちらのサイト様から頂きました
http://odai.ninja-x.jp/title/index.html
よろしければお気軽にご感想などお寄せ下さい。
コスタールの港から海を眺め、シャークアイが呟いた。カデルは倉庫の裏にいたが、火のつかぬ煙草を諦め、主人のところまで戻ってきた。
「キャプテン。結論は出ましたかい?」
「うん。やはりやめておこう。」
カデルは空とも海ともつかぬ灰色の世界に視線を投げた。遠くの船は雨に輪郭をかき消され、マール・デ・ドラゴーン号も、ぼんやりと黒っぽい影にしか見えない。
「午後までに止むと思ったんですがなあ。まあ、仕方ないですな。」
「出航を希望していた貿易船には、明日以降にしてもらおう。コスタールを出るまでは護衛出来ても、その後が危険だからな。」
「そうですね。急いでいるようでしたが、安全が一番でさ。」
毛羽立つ陰気な海に、繋がれた幾艘かの船が上下している。気の滅入る天候にため息をついたカデルを見て、シャークアイは笑った。
「悩んでも仕方ない。われわれも一日休養しよう。」
出来れば本日の出航を、と希望していた貿易船のため、雨の降り始めた昨夜から今日の午前中にかけて、シャークアイとカデルは空模様を眺め続けていた。そのせいで気疲れはしていたが、しかし船が出ないとなれば残りの半日、海賊たちのめったにない休養に充てることが出来る。
「カジノでも行くか、カデル?」
「キャプテンは?」
「そうだな。オレは、まずは城に戻ろう。」
倉庫の屋根に跳ねる雨音が激しくなった。シャークアイはカデルと別れ、ひとりコスタール城を目指した。街中には伝令を待つ海賊たちが暇を持て余していた。シャークアイの姿を見ると、彼らは皆、顔を上げた。
「キャプテン! どうなりました!?」
「やはり今日は出られぬ! お前たち、一日休んでくれ!」
「やった。」
海賊たちから歓声があがった。こんな雨でも休養となれば、昼から酒を飲み、コスタール王が用意した王立カジノで遊ぶことが出来る。
「じゃ、さっそくカジノに行っても?」
「行ってくれ。」
シャークアイは笑った。マール・デ・ドラゴーンは今やコスタール国防の要、すっかり日々の戦闘に責任をもつようになった船員たちだが、たまには昔のように、気ままに遊ばせてやりたい。
「キャプテンは?」
「オレは一度城に戻る。仲間を見たらよろしく伝えてくれ。」
カジノに向かう海賊たちに混じり、シャークアイは城を目指した。待つ人を思うと、思わず小走りになる。心はすでに城にあったから、目の前に立ちふさがるまでボロンゴの姿に気づかなかった。シャークアイは驚いて足を止め、ボロンゴを見た。呼吸を乱して先を急ぐシャークアイを、ボロンゴは不思議そうに見た。
「キャプテン、何かあったので?」
「ボロンゴ、お前も船を降りていたのか。今日は休みだ、自由にやってくれ。」
「キャプテンは?」
シャークアイははにかんで言葉を濁した。
カジノや酒場に向かう船員たちの間をすり抜け、石造りの道を走る。急ぐ姿は、人から見れば、雨避けの屋根を求めているように見えるだろう。頭からかぶっていたコートが風に脱げて、火照った頬に冷たい雨粒が伝った。
毎日は忙しく、危険な海に連れていくことも出来ず、こうして長い時間を約束されることは久しぶりだった。喜ぶ人の姿を思い描くと、それだけで胸があたたかくなる。
足元に水を跳ねさせて近づいてくるシャークアイの姿に門番たちは戸惑いの表情を浮かべた。
「シャークアイ様! 何かありましたか?」
「いやいや何もない。今日の出航は取り止めになった。船の者は一日休みにした。」
「そうでしたか。この雨ですからね。では、シャークアイ様も久しぶりにご休養ですね。」
「そういうわけだ。通してくれ。」
「はあ、皆さん昼からカジノですね、いいなあ。といっても僕は普段から交替で休みをもらっている身ですが…」
長話の若い門番にシャークアイは苦笑した。
「すまないがオレは急いでいるのだ。焦らさないで通してくれないか?」
「あっ、すみません、どうぞ! お急ぎのご用事でしたか、どちらへ?」
また同じ質問だ。シャークアイは開かれた門をくぐりながら、門番に答えた。
「早く、妻のところへ。」
――――――――――
雨の音を聞きながらアニエスが窓の外を眺めて「こんなお天気で大丈夫なのかしら?」と心配していると、シャークアイがやってきて「今日は休みだ! 一日アニエスといられるよ!」って言っているのを想像すると可愛いなーって思って書きました。いつまでも新婚さんみたいな二人だと思います。
シャークアイが好きすぎるモル元にはアニエスは羨ましくもあるのですが、でも愛妻家なシャークアイが好きです!
お題はこちらのサイト様から頂きました
http://odai.ninja-x.jp/title/index.html
よろしければお気軽にご感想などお寄せ下さい。
PR
この記事にコメントする
CALENDAR
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
MENU
サーチエンジン・同盟
最新コメント
[08/26 NONAME]
[08/20 モル元]
[08/17 NONAME]
[08/14 モル元]
[08/14 モル元]
最新記事
(04/13)
(02/25)
(08/28)
(11/18)
(11/16)
プロフィール
HN:
モル元
性別:
女性
自己紹介:
ゲーム大好きモル元です。
9のプレイも一段落ついて、そろそろ7小説に戻ろうか、と書き始めた途端、シャークアイの知名度や活動人口の少なさを再び思い知って打ちひしがれている今日この頃です。皆さんにシャークアイのことを思い出してもらったり、好きになってもらうために、めげずに頑張って書いていきます!
シャークアイ関連の雑談やコメントなど随時募集中。お気軽に話しかけてやって下さい。世の中にシャークアイの作品が増えるといいなと思って活動しています。
シャークアイ、かっこいいよね!
9のプレイも一段落ついて、そろそろ7小説に戻ろうか、と書き始めた途端、シャークアイの知名度や活動人口の少なさを再び思い知って打ちひしがれている今日この頃です。皆さんにシャークアイのことを思い出してもらったり、好きになってもらうために、めげずに頑張って書いていきます!
シャークアイ関連の雑談やコメントなど随時募集中。お気軽に話しかけてやって下さい。世の中にシャークアイの作品が増えるといいなと思って活動しています。
シャークアイ、かっこいいよね!
ブログ内検索