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ドラゴンクエスト7の小説ブログです。 9プレイ日記もあります。
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最後に会話が途絶えてから、それほど長く俯き、盤ばかり見ていただろうか。ナイトを進めて顔を上げた時、王は対戦者が眠りに落ちていることに気付いた。
 
「…シャーク?」
 
声をかけても反応はない。いつから意識を失っていたのか、脱力した背中をソファに委ね、目を閉じた顔はわずかに横に傾き、ぴくりとも動かなかった。

「シャークアイ? 眠ってしまったのか?」
 
駒一つに長考したのは勝負が白熱していたからではなく、むしろ盤を手遊び程度に扱っていたからだ。それはシャークアイにとっても同じで、次の手を、と促すために起こすほどゲームに執着があるわけではない。

…どうしようか。

王は席を離れ、シャークアイに近づいた。腰を屈めて顔を覗き込むと、眠りはまだ浅いらしく、表情にいくらか緊張が残っていた。呼吸のリズムも短い。上下する胸は頑強な鎧に覆われていて、眠るにはいかにも窮屈そうだ。それは起こす理由になるだろうか。

何か、彼の眠りを破るためにはまっとうな言い訳が必要だった。実のところは夜更かしの王が一人きりで醒めた世界に取り残されることに耐えられないだけだ。が、かと言って所在なさを理由に肩を揺さぶるような我儘者にはなれなかった。友人に対する気遣いが半分、残りは王自身の気位によるものだ。

「眠るなら鎧を取らないか? その装備では苦しいだけだろう。」

だが、我儘と言うのなら今更だった。そもそも一日をコスタールのための戦闘に費やして疲労したシャークアイを、夜にまでこうして招いていること自体が身勝手なのだ。この上「つまらぬから起きてくれ」と言える立場でない。いや、むしろ早く起こして帰してやったほうが、はるかに友のためだろう。そしてあまり呼び立てないほうが。

そう分かっていて王はなお招くことを遠慮しないだけの傲慢さも持ち合わせているのだから、シャークアイにしてみれば厄介な友人に違いなかった。礼儀を重んじるシャークアイが一国の王の親しい招待を簡単には断れないことを王は知っていたし、その上、彼の優しい心につけいるように孤独がってみせ、むやみに同情を引いていることは悪質な遣り口だと、王自身も自覚していた。

「…起きないのか?」

夢うつつに王の声が届いたのか、シャークアイの眉が僅かに顰められた。


半ば目覚めかけた手が重たそうに持ち上がり、肩の留め具の上で止まった。それきりまた動かない。呼吸は先程より少し長くなり、そう寝苦しいわけではないらしかった。王は肩に置き去りにされたシャークアイの手を掴み、そっと脇に下ろした。鎧の継ぎ目を観察してみたが、マール・デ・ドラゴーンの男たちが纏う鎧は他国の技術で鍛えられていて、コスタールの王には外し方は分からなかった。
 
王はため息をつき、友人の眠るソファの横に腰を下ろした。床の上だが、咎める臣下の眼がないのなら王自身は気にしなかった。目の前には投げ出された海の覇者の足があり、王は膝を立てて座ったままぼんやりとそれを見つめた。すらりと伸びた両足は甲冑に包まれ、頼もしい戦士の威厳を滲ませている。見上げれば長い黒髪は先程触れた肩の付近だけが乱れ、残りは真っ直ぐ背中を滑り落ちていた。衣服の輪郭が、呼吸に合わせて規則正しく緩やかな変化を繰り返している。

しばらく黙ってその寝姿を見つめるうち、無聊を嘆く不安な気持ちは次第に小さくなってやがてかき消え、かえって思わぬ安らぎが胸の内に広がっていった。王はその変化に驚きを感じた。思えば、眠る者を隣に得て、その穏やかで確実な生命の存在感のうちに心身をひたすことなど、いつ以来だろうか。


物音を立てぬよう、そっとソファの肘に頭をもたれかける。友の身に配慮するなら、今すぐにでも彼を起こして自室に戻してやることこそ親切だとは分かっていた。彼には時計の針を眺めながら目覚めて待つ人がいて、彼自身もそこを居場所に望んでいるのだから。寂しいのは私だけではないという自戒と、ならば結局私だけなのだという切なさとがせめいだ。

いくら不自由のない立場に生まれ、守られて生きたと言って、子供の時分ならともかく、昔からこんなに心が幼くて自分勝手だったわけではない。奪われ、そして後に与えられたものが大きすぎたことが王を変えたのだ。どれほどの苦労や面倒をかけて疎まれるべきことをしても決して憎まれない、結ばれた友情は尊く、まるで不可思議な力によって最初から約束されていたものであるかのようだった。それに頼り、おのれに甘く接することが王にとって今残された唯一の生きる術になっていた。


息を潜め、目を閉じて、部屋に満ちる優しい気配に身を委ねた。自分にも聞こえないほどひそやかに深い呼吸を試みる。ゆっくりと力が抜けていく。何年も冷たく強張っていた肉体から。


このまま、あと少しだけ。



――――――――――

お題はこちらのサイト様から頂きました
http://odai.ninja-x.jp/title/index.html




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ゲーム大好きモル元です。

9のプレイも一段落ついて、そろそろ7小説に戻ろうか、と書き始めた途端、シャークアイの知名度や活動人口の少なさを再び思い知って打ちひしがれている今日この頃です。皆さんにシャークアイのことを思い出してもらったり、好きになってもらうために、めげずに頑張って書いていきます!

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