ドラゴンクエスト7の小説ブログです。
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その猫は決戦前の雨に濡れていた。
足音が猫の前で立ち止まる。
猫はその靴先に身体を擦りつけ、戯れた。
水滴を落とす大きな手が伸びてきて、濡れた頭を撫でた。
「ミント。」
シャークアイは猫を持ち上げるとじっとその顔を見た。
愛猫ミント。いつもシャークアイとアニエスの部屋に眠っていた猫。
「…お前はいい猫だ。」
最近は戦いに忙しい主人にあまり構われなかったミントは、にゃあんと甘い声で鳴いた。
ぶる、と少しだけ身体を震わせると雨のしずくが飛び散り、主人を笑わせた。
シャークアイはミントを柔らかなタオルに包むと、両腕に抱いたまま船を下りた。
砲台に男たちが集まって戦の準備をしている。
コスタールの王宮、謁見の間の上に位置する客室。
アニエスは窓の外を見ていたが、シャークアイの靴音を聞いて振り返った。
「アニエス。」
濡れた髪のシャークアイがそこに立っていた。
その腕からするりと猫が降り立ち、主人の足元を歩く。
「シャークアイ。来てくれたの?」
「起きていたのか、アニエス。あまり無理しないでくれ。」
「ふふ、平気よ。このお部屋、とても居心地がいいわ。…おいで、ミントちゃん。」
ミントは主人のそばをなかなか離れようとしない。
不安そうにうろうろと歩きまわる。主人の歩みを妨げるように。
シャークアイはミントを抱きあげ、埋もれた喉を掻いてやってから、
アニエスのベッドの前に膝をついた。
「遠慮なさらないで座って下さいな。あなた。」
「いや、ここでいい。濡れているから。こっちにおいで、アニエス。あまり窓際にいると身体を冷やすよ。」
「もう、心配ばっかりね。」
アニエスはすなおにシャークアイの言葉に従って、ベッドの上に腰かけた。
はなやかで優しい、ピンク色の天蓋に、アニエスの金色の髪が透ける。
「ミントちゃん、嬉しそうだわ。久しぶりにあなたに可愛がってもらって。」
「ミントを置いていく。」
「あら、そうなの?」
「お前ひとりでは寂しいだろうと思ってな。ミントにも少しの間、アニエスと一緒にここでオレを待っていてもらおう。」
優しい会話の終わりに、物問いたげな猫の甘い鳴き声。
シャークアイは微笑して指先で背中の毛並みに触れた。
「…もう行くよ。アニエス。オレがいない間も身体を大事にしてくれよ。」
「ええ。ありがとう。気をつけて、あなた。」
「うん。アニエスも。…ミント、お前もな。」
去ろうとするシャークアイのほうを、ミントの両眼がじっと見ている。
こんなふうに人を見るときの猫の目は、いつもどこか、人の周りにある虚空を見つめていて、まるで迫り来る未来に気づいているかのよう。
勘の鋭い猫が不安な鳴き声を上げる前に、シャークアイはミントの喉を優しく愛撫した。
何度も何度も、ミントが幸福そうに眼を細めるまで。
「いい子だ、ミント。アニエスとオレたちの子を、頼むぞ。」
――――――――――
お題はこちらのサイト様から頂きました
capriccio様
足音が猫の前で立ち止まる。
猫はその靴先に身体を擦りつけ、戯れた。
水滴を落とす大きな手が伸びてきて、濡れた頭を撫でた。
「ミント。」
シャークアイは猫を持ち上げるとじっとその顔を見た。
愛猫ミント。いつもシャークアイとアニエスの部屋に眠っていた猫。
「…お前はいい猫だ。」
最近は戦いに忙しい主人にあまり構われなかったミントは、にゃあんと甘い声で鳴いた。
ぶる、と少しだけ身体を震わせると雨のしずくが飛び散り、主人を笑わせた。
シャークアイはミントを柔らかなタオルに包むと、両腕に抱いたまま船を下りた。
砲台に男たちが集まって戦の準備をしている。
コスタールの王宮、謁見の間の上に位置する客室。
アニエスは窓の外を見ていたが、シャークアイの靴音を聞いて振り返った。
「アニエス。」
濡れた髪のシャークアイがそこに立っていた。
その腕からするりと猫が降り立ち、主人の足元を歩く。
「シャークアイ。来てくれたの?」
「起きていたのか、アニエス。あまり無理しないでくれ。」
「ふふ、平気よ。このお部屋、とても居心地がいいわ。…おいで、ミントちゃん。」
ミントは主人のそばをなかなか離れようとしない。
不安そうにうろうろと歩きまわる。主人の歩みを妨げるように。
シャークアイはミントを抱きあげ、埋もれた喉を掻いてやってから、
アニエスのベッドの前に膝をついた。
「遠慮なさらないで座って下さいな。あなた。」
「いや、ここでいい。濡れているから。こっちにおいで、アニエス。あまり窓際にいると身体を冷やすよ。」
「もう、心配ばっかりね。」
アニエスはすなおにシャークアイの言葉に従って、ベッドの上に腰かけた。
はなやかで優しい、ピンク色の天蓋に、アニエスの金色の髪が透ける。
「ミントちゃん、嬉しそうだわ。久しぶりにあなたに可愛がってもらって。」
「ミントを置いていく。」
「あら、そうなの?」
「お前ひとりでは寂しいだろうと思ってな。ミントにも少しの間、アニエスと一緒にここでオレを待っていてもらおう。」
優しい会話の終わりに、物問いたげな猫の甘い鳴き声。
シャークアイは微笑して指先で背中の毛並みに触れた。
「…もう行くよ。アニエス。オレがいない間も身体を大事にしてくれよ。」
「ええ。ありがとう。気をつけて、あなた。」
「うん。アニエスも。…ミント、お前もな。」
去ろうとするシャークアイのほうを、ミントの両眼がじっと見ている。
こんなふうに人を見るときの猫の目は、いつもどこか、人の周りにある虚空を見つめていて、まるで迫り来る未来に気づいているかのよう。
勘の鋭い猫が不安な鳴き声を上げる前に、シャークアイはミントの喉を優しく愛撫した。
何度も何度も、ミントが幸福そうに眼を細めるまで。
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モル元
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女性
自己紹介:
ゲーム大好きモル元です。
9のプレイも一段落ついて、そろそろ7小説に戻ろうか、と書き始めた途端、シャークアイの知名度や活動人口の少なさを再び思い知って打ちひしがれている今日この頃です。皆さんにシャークアイのことを思い出してもらったり、好きになってもらうために、めげずに頑張って書いていきます!
シャークアイ関連の雑談やコメントなど随時募集中。お気軽に話しかけてやって下さい。世の中にシャークアイの作品が増えるといいなと思って活動しています。
シャークアイ、かっこいいよね!
9のプレイも一段落ついて、そろそろ7小説に戻ろうか、と書き始めた途端、シャークアイの知名度や活動人口の少なさを再び思い知って打ちひしがれている今日この頃です。皆さんにシャークアイのことを思い出してもらったり、好きになってもらうために、めげずに頑張って書いていきます!
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