ドラゴンクエスト7の小説ブログです。
9プレイ日記もあります。
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春ゆえに桜の小説を書きました。
シャークアイとアルス。
二人が乗っているのは、ゲーム後半に出てくる空を飛ぶ石の舟、飛空石です。
見た目がかなり地味でしたね、あれ。
***
シャークアイとアルス。
二人が乗っているのは、ゲーム後半に出てくる空を飛ぶ石の舟、飛空石です。
見た目がかなり地味でしたね、あれ。
***
上空から見下ろす景色は、
いつ以来のものだろうか。
眼下に輝くどこまでも広い海、鳥も雲も超えた高さで、
慣れた僕はもう足をすくませることはないけれど、シャークアイははじめから、少しもおびえなかった。
「高い!」
ぐんぐんと遠ざかり、小さくなっていく海賊船を見つめながら、シャークアイは興奮した声でそう叫んだ。その時まだ鳥が頭上で鳴き交わしていたから、もっともっと高くまでこの舟がのぼっていくことを僕は知っていたけれど、それを告げることも、そして光る海を見ることも忘れて、僕はシャークアイを眺めていた。空をゆく小さな舟には僕とシャークアイの二人だけしかいないせいか、それとも初めての体験だからか、彼は海賊船にいる普段とは全然印象が違った。
「アルス殿! アルス殿の島が全部見えますよ!」
鳥たちを追い抜き、エスタードを見下ろす僕たちの目の高さが神様のそれになったとき、シャークアイがまた歓声を上げた。雲を突き抜ける瞬間の高揚感に僕の心も震えた。冒険の始まりの場所だったあの東の神殿は日差しを反射し、光の粒のようになっていた。フィッシュベルの漁船は、もう玩具くらいの大きさ。シャークアイは壁に手をつき、乗り出すようにして世界を見つめていた。
「あの…、シャークアイ、怖くないですか?」
「どうしてですか?」
高いからに決まっているのに、シャークアイはほとんど無邪気に見える笑顔でそう問い返した。
「えっと…前にお母さんを乗せてあげようと思ったのに、怖くて乗ってくれなかったから…。」
「ははは、そうでしたか。なるほど足がすくむようだ。」
そんなふうに答えたくせに、シャークアイの顔には少しも恐怖が表れていなかった。僕がこんなことを思うのも変かもしれないけれど、冒険好きの子供の顔だ。神殿の謎を解こうとしていた頃のキーファを思い出した。
「アルス殿の舟、伝説のエデンの賜り物に身を委ねて怖いということはありますまい。また誘ってみればよいでしょう。」
「どうかなあ…」
「雲が綺麗だ。これから、どこへ?」
「メモリアリーフのほうに行くつもりなんです。」
内陸を、シャークアイはあまり知らない。僕はそう思っていた。マール・デ・ドラゴーンは世界の海を渡るけれど、港から港へ移動するばかりだから。
「行ったこと、ある?」
「ずっと以前になら。」
シャークアイはそう答えてから「それに、陸路だったな。」と付け足した。キラキラ光るまなざしは通り過ぎていく地上の景色を映していた。その瞳を、もうすぐあの花の色が驚かすのかと思うと、僕の胸は期待に高鳴った。
冒険の間に出会ったいくつもの夢のような風景の中でも、あれは特別だったと思う。華やかで、美しくて、そして儚く、メモリアリーフで知った過去と現在の人々の思い出と結びついて、僕の心に強い印象を与えていた。
神様の舟はゆっくりと北上し、クリスタルパレスの島を通過して、少しだけ西へ舵を取った。リートルードのほうへ。酔いませんか?、と声を掛けると、シャークアイはエンゴウの遠い炎に目を細めながら、平気ですよ、揺れないし、少しも酔わないと囁くように答えた。僕は彼の隣に並び立って、メモリアリーフのあの景色を待っていた。
あの世界が、ありますように。
そしてシャークアイの心を喜ばせますように。
それは一年のうちほんのわずかの間しか姿を見せない、とても希少な光景で、
そして強い雨ひとつで失われてしまう、ひどくあやういものだ。
色も形も幻のように淡い、一面の……。
やがて遠くに不思議な色の集合が見え始め、近づくにつれてシャークアイが息を呑む気配が、隣にいる僕まではっきりと伝わってきた。僕は高度と速度を次第に落とした。舟は風の中にたゆたうように、花咲く都の上空にとどまった。
「アルス殿。あれは?」
誰であれそこに視線を奪われるだろう、指差す必要のないシャークアイの手は壁に這ったままだった。大きな手も、声も、新鮮で温かな興奮と歓喜を孕み、それは僕の心を満たした。
僕は薄紅色に透ける花弁のことや、川べりの並木が水面に触れそうなほど枝を垂れる荘厳さ、夜の街灯に照らされた幽玄な姿まで、いくらでも教えてあげたいことはあったけれど正しく説明出来ていたかどうか分からない。空にいるからだけではない興奮が僕を包み、キーファや、父や母に自分の知る素晴らしい何かを伝えたくてとりとめなく語り続けた幼い頃のよう、まるで夢の中で話しているようだったから。舟を下りて、一度海に戻って、フィッシュベルの家にも戻って、皆でメモリアリーフにあの花を見に行こうかと、そんな話になっていた時、ふとシャークアイは微笑しながら、「綺麗だ、いつかアニエスにも見せたい。」と言った。一瞬の姿だったけれど、あまり優しい表情と声だったから、ふわふわと雲の上を歩いていた僕の意識にも、それはくっきりと焼きついた。
僕に向かって、あなたの舟、あなたの島と語り、巨船を指してわたしの船と言い切るシャークアイの、世界の美しさを人と共にすることを愛している姿が僕の心を惹いたのだと思う。僕がお喋りを忘れてシャークアイを見つめていると、シャークアイは僕の視線に気付いて、なに?と問うように首をかしげて笑った。僕はもう一度口を開き、あの木々が地上から見るととても太くて力強い幹を持っていること、四方に向かって悠然と伸ばされる枝の頑丈さを語った。だけど二人並んで空から見下ろすその枝はどれも無数の柔らかな花びらに包まれていて、緑の大地に溶けて広がる、優しい色をした靄のようだった。
いつ以来のものだろうか。
眼下に輝くどこまでも広い海、鳥も雲も超えた高さで、
慣れた僕はもう足をすくませることはないけれど、シャークアイははじめから、少しもおびえなかった。
「高い!」
ぐんぐんと遠ざかり、小さくなっていく海賊船を見つめながら、シャークアイは興奮した声でそう叫んだ。その時まだ鳥が頭上で鳴き交わしていたから、もっともっと高くまでこの舟がのぼっていくことを僕は知っていたけれど、それを告げることも、そして光る海を見ることも忘れて、僕はシャークアイを眺めていた。空をゆく小さな舟には僕とシャークアイの二人だけしかいないせいか、それとも初めての体験だからか、彼は海賊船にいる普段とは全然印象が違った。
「アルス殿! アルス殿の島が全部見えますよ!」
鳥たちを追い抜き、エスタードを見下ろす僕たちの目の高さが神様のそれになったとき、シャークアイがまた歓声を上げた。雲を突き抜ける瞬間の高揚感に僕の心も震えた。冒険の始まりの場所だったあの東の神殿は日差しを反射し、光の粒のようになっていた。フィッシュベルの漁船は、もう玩具くらいの大きさ。シャークアイは壁に手をつき、乗り出すようにして世界を見つめていた。
「あの…、シャークアイ、怖くないですか?」
「どうしてですか?」
高いからに決まっているのに、シャークアイはほとんど無邪気に見える笑顔でそう問い返した。
「えっと…前にお母さんを乗せてあげようと思ったのに、怖くて乗ってくれなかったから…。」
「ははは、そうでしたか。なるほど足がすくむようだ。」
そんなふうに答えたくせに、シャークアイの顔には少しも恐怖が表れていなかった。僕がこんなことを思うのも変かもしれないけれど、冒険好きの子供の顔だ。神殿の謎を解こうとしていた頃のキーファを思い出した。
「アルス殿の舟、伝説のエデンの賜り物に身を委ねて怖いということはありますまい。また誘ってみればよいでしょう。」
「どうかなあ…」
「雲が綺麗だ。これから、どこへ?」
「メモリアリーフのほうに行くつもりなんです。」
内陸を、シャークアイはあまり知らない。僕はそう思っていた。マール・デ・ドラゴーンは世界の海を渡るけれど、港から港へ移動するばかりだから。
「行ったこと、ある?」
「ずっと以前になら。」
シャークアイはそう答えてから「それに、陸路だったな。」と付け足した。キラキラ光るまなざしは通り過ぎていく地上の景色を映していた。その瞳を、もうすぐあの花の色が驚かすのかと思うと、僕の胸は期待に高鳴った。
冒険の間に出会ったいくつもの夢のような風景の中でも、あれは特別だったと思う。華やかで、美しくて、そして儚く、メモリアリーフで知った過去と現在の人々の思い出と結びついて、僕の心に強い印象を与えていた。
神様の舟はゆっくりと北上し、クリスタルパレスの島を通過して、少しだけ西へ舵を取った。リートルードのほうへ。酔いませんか?、と声を掛けると、シャークアイはエンゴウの遠い炎に目を細めながら、平気ですよ、揺れないし、少しも酔わないと囁くように答えた。僕は彼の隣に並び立って、メモリアリーフのあの景色を待っていた。
あの世界が、ありますように。
そしてシャークアイの心を喜ばせますように。
それは一年のうちほんのわずかの間しか姿を見せない、とても希少な光景で、
そして強い雨ひとつで失われてしまう、ひどくあやういものだ。
色も形も幻のように淡い、一面の……。
やがて遠くに不思議な色の集合が見え始め、近づくにつれてシャークアイが息を呑む気配が、隣にいる僕まではっきりと伝わってきた。僕は高度と速度を次第に落とした。舟は風の中にたゆたうように、花咲く都の上空にとどまった。
「アルス殿。あれは?」
誰であれそこに視線を奪われるだろう、指差す必要のないシャークアイの手は壁に這ったままだった。大きな手も、声も、新鮮で温かな興奮と歓喜を孕み、それは僕の心を満たした。
僕は薄紅色に透ける花弁のことや、川べりの並木が水面に触れそうなほど枝を垂れる荘厳さ、夜の街灯に照らされた幽玄な姿まで、いくらでも教えてあげたいことはあったけれど正しく説明出来ていたかどうか分からない。空にいるからだけではない興奮が僕を包み、キーファや、父や母に自分の知る素晴らしい何かを伝えたくてとりとめなく語り続けた幼い頃のよう、まるで夢の中で話しているようだったから。舟を下りて、一度海に戻って、フィッシュベルの家にも戻って、皆でメモリアリーフにあの花を見に行こうかと、そんな話になっていた時、ふとシャークアイは微笑しながら、「綺麗だ、いつかアニエスにも見せたい。」と言った。一瞬の姿だったけれど、あまり優しい表情と声だったから、ふわふわと雲の上を歩いていた僕の意識にも、それはくっきりと焼きついた。
僕に向かって、あなたの舟、あなたの島と語り、巨船を指してわたしの船と言い切るシャークアイの、世界の美しさを人と共にすることを愛している姿が僕の心を惹いたのだと思う。僕がお喋りを忘れてシャークアイを見つめていると、シャークアイは僕の視線に気付いて、なに?と問うように首をかしげて笑った。僕はもう一度口を開き、あの木々が地上から見るととても太くて力強い幹を持っていること、四方に向かって悠然と伸ばされる枝の頑丈さを語った。だけど二人並んで空から見下ろすその枝はどれも無数の柔らかな花びらに包まれていて、緑の大地に溶けて広がる、優しい色をした靄のようだった。
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HN:
モル元
性別:
女性
自己紹介:
ゲーム大好きモル元です。
9のプレイも一段落ついて、そろそろ7小説に戻ろうか、と書き始めた途端、シャークアイの知名度や活動人口の少なさを再び思い知って打ちひしがれている今日この頃です。皆さんにシャークアイのことを思い出してもらったり、好きになってもらうために、めげずに頑張って書いていきます!
シャークアイ関連の雑談やコメントなど随時募集中。お気軽に話しかけてやって下さい。世の中にシャークアイの作品が増えるといいなと思って活動しています。
シャークアイ、かっこいいよね!
9のプレイも一段落ついて、そろそろ7小説に戻ろうか、と書き始めた途端、シャークアイの知名度や活動人口の少なさを再び思い知って打ちひしがれている今日この頃です。皆さんにシャークアイのことを思い出してもらったり、好きになってもらうために、めげずに頑張って書いていきます!
シャークアイ関連の雑談やコメントなど随時募集中。お気軽に話しかけてやって下さい。世の中にシャークアイの作品が増えるといいなと思って活動しています。
シャークアイ、かっこいいよね!
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