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ドラゴンクエスト7の小説ブログです。 9プレイ日記もあります。
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DQ9小説です。
デュリオとじいさんとあらくれとかです。

そういえばモル元はあらくれのズボンばっかりいっぱい持っていますが、気に入っています! 履かないけど…。マスクは武闘家が常時装備しています。マスクを脱ぐと、銀髪モヒカンに紫色の涼しい目元をしているから、何となく直視できません…どうしてセッツァーカラーにしちゃったんだろうと思います。妙にガテンかっこよくてドキッとします。


*お話は、盗賊レベル40クエスト後です。






***


小屋の外に出ると、いつもの老人が焚火をしていた。するべきこともなく、毎日、昼も夜もずっとこうしてここにいるのだ。

「おおデュリオ。すまんが、何か燃やすものはないかのう?」

寒くてかなわん、と零しながら、老人は身を縮ませた。羽織った襤褸はいつのものか、汚れきっていて、元の色も分からない。

デュリオは火のそばにしゃがむと、燃える炎をぼんやりと見つめた。別に寒い季節でもない。昼間は川で水浴びしている男だっている。老人の身体がばかになっているだけだ。彼はいつだって寒がっている。

「パンツまで燃やしてしまっての、もう何もないんじゃよ。礼はするぞ。」

そう言われても、デュリオだって何か余計なものを持っているわけではなかった。義賊の長い袖からのぞく手首には大きな宝石のついた腕輪が嵌められ、手にいくつかの指輪が炎の赤い光を受けて輝いていたが、燃えぬ宝石など今の老人にとっては無価値なものだった。老人は皺くちゃの手でデュリオのターバンを引っ張った。が、これは素顔を覆う盗賊の必需品だ。デュリオは苦笑した。

「そうだな…。じゃあこれをやるよ。ほらよ、こんなものしかねえけどよ。」
「おお、ありがたい。…う…くさ…っ!? これは…うまのふん…!?」
「違うよ、牛のだよ、牛の。」

乾いた牛のふんをそれでも老人は火に投げ込んだ。鼻が曲がるほど臭い。街全体がドブのように臭いのに、案外嗅覚は正常なんだな、とデュリオは思った。老人は、「おお、あったかい」と喜び、凍えた肩の力を少し抜いたようだった。

「そうじゃ、そうじゃ、礼をしないとな。」
「いいよ、気にしないでくれ。」

老人がどこかで拾った1ゴールドを渡してくることは、デュリオだけでなくこのあたりの連中なら誰でも知っていた。たった1ゴールドだが貯めれば何かになるだろう。とっておけばいいさ、とデュリオは思う。

ぬくまった地面に座り直して明かりの少ない街を見上げた。誰かが干した洗濯物がもう何日かそのままになっている。すりきれて薄汚れたそれも、夜目にはぼんやりと白く浮かび上がって、何となく綺麗に見えた。

デュリオの濃い色のターバンに映る火の揺らめきを、老人は見るともなしに見ていた。酒場の扉が開く気配がしたとき、眼だけ動かして様子を探る姿も。あらくれの男が一人、酒場から飛び出してくる。といっても急いでいるわけではなく、足取りが怪しいだけのようだった。酔っているのだ。

「ああ…デュリオの旦那ァ…。うっ!? なんだあ、このにおいは!」

男が慌てる姿を見て、デュリオは笑った。

「臭えだろ? 中に入ってろよ。」
「いや、旦那に話があってよ…。」
「どうした?」
「何か、仕事はねえかと思って。」

あらくれはデュリオの後ろに突っ立ってどこか悪びれたように言った。ふむ、とデュリオは思いを巡らせる。盗賊団は先日大きな仕事をしたばかりだ。そんなことがあった後は、懐を温かくしたメンバーは散り散りになる。街を出て遊びに行く者、街のどこかに消えて連絡が途絶える者、仕事で得た大金をもとにして盗賊団から足を洗う者。いずれにせよ、今は呼びかけてもいつものように頭数が揃わないだろう。皆、貧しくなったら何となしに集まってくる、その時までは解散みたいなものだ。

「……ないな。」
「何もねえか?」
「どうした? 暇なのか?」
「いや、というより金がないんだ。」

やっぱりな。内心で想像していた通りだったことにデュリオは思わずにやりと笑った。その笑顔につられてあらくれも喋りながら途中で自分で笑った。

「あんなに取り分があったのに、飲んじまったのか?」

横から老人が、「しかたがないのう…」と呟いたが、デュリオも老人も、男を責めはしなかった。このカラコタ橋では、誰も、誰かを責めたりしない。誰も正しく生きろとは言わない。神の名を口にして導きの説教をするべき神父すら、酒に溺れ、持ち崩し、その神聖な地位を金にかえてしまった。かわりに今は妙に愛嬌のある若い盗賊が人々の祈りを聞き届けていて、街の者にとってはかえって頼りやすい場所になっている。

方々から流れ着く、身元の分からぬ者たち。歳寄りも女もいる。転落するな、やり直せという説得はこの街では求められていない、だから伝道師も橋の下まで来ることはなかった。目映い昼間の太陽、城下町の賑わいに、耐えられるだけの強さのない者もいるのだ。行き場のない彼らが彷徨ったあげく、ほっと息をつけるのがこの橋の下だった。ゆったりした時間の中に、おのれをどこまで落としても許され、出て行く者はいずれ出て行く。中にはこの老人のように、多分、死ぬまで居続ける者もいる。いつか寒さを忘れる日、彼は自分自身の肉体を薪にするだろう。その時は供養してやろうとデュリオは思う。あの盗賊神父とともに、そして飲んだくれて街を徘徊する本物の神父も一緒に。

「今は仕事は紹介してやれない。かわりだ、持って行きな。」

デュリオは手首から腕輪をひとつ抜き取ると、あらくれ男に向けて投げた。手の中に飛び込んできた高価な宝石に男は驚き、「いいのか!?」と聞いたが、今更駄目だと言われないことは十分知っている顔をしていた。デュリオが装飾品を身に着けているのはカラコタの困った連中に気前よく与えるためで、世話になっているのは何もこのあらくれ男だけではないからだ。宝石はあらくれ者の手のひらの上で光っていた。繊細な細工だが、それが愛でられる間もなく換金されるに違いない、そしてその金は全て酒にかわるだろう。それでデュリオは構わなかった。何年も脳裏に灼きついていた宝石が一つだけあったが、今のデュリオにとっては、手放せない石などない。

「飲むなよ。」

デュリオは一応そう言ったが、全く期待していなかった。意志の弱いこの飲んだくれは、どうせすぐ飲むのだ。構わない。今は、それでもいい。

「おう、ありがとうよ! 恩に着るぜ、デュリオの旦那!」
「若いの、大事に飲むんじゃぞ。」

老人の言葉にあらくれは背中を向けたまま手だけ振った。そのまま去っていくのかと思ったら、「ああ、じいさん」と言いながら戻ってきた。

「やるよ。大したもんじゃねえけどな。」

あらくれは腰に挟んでいた雑誌を火の中に投げ込んだ。拾ったのか、それとも無駄遣いをして買ったものなのか、ひとたび街の者の手に渡ればどんな新品でも一様に薄汚れて古び、じわじわと炎に侵食されていく間に縒れたその書名を見分けることは出来なかった。

「たいようの石ってのがあるらしいぜ、じいさん。そいつがあればたいそうあったかいんだと。」

雑誌が火に溶けていく様子を眺めながら、男はまるで叶うことのない遠い世界の夢のようにそんな話をした。デュリオはその石を見たことがあった。いつか、手に入ったらじいさんにやろう。

あらくれは寒くもないのに自分の肩をさすり、

「寒いなあ、風邪引くなよ、じいさん。」

と言い残して姿を消した。1ゴールドを貰い忘れたな、とデュリオは気付いた。


二人きりになり、また沈黙があたりに落ちた。火の弾ける音と、耳慣れた川の流れを聞いている。どこかの家で幼子が泣き始め、しばらくするとそれもやんだ。老人がのっそりと口を開いた。

「デュリオ、おぬし、いつまでこの街にいるつもりなんじゃ?」
「…なんだ、急に。」
「最近おぬしの様子が、少し変わった気がしてのう。」

デュリオは答えずに火を見つめた。確かに、変わったと思う。自分にとって懸案であった大きな仕事が終わり、今までに感じたことのない、やわらかな安らぎが胸を満たしていた。街の者には告げていないが、さすが歳の功だろうか、老人にはその変化が分かるのだろうか。

「時々、この橋を出て行く連中と、似た雰囲気がするんじゃよ。何か、決心した感じじゃ。」
「……そうかもな。心が晴れた。でも、おれは出て行かないぜ。」

あの卑怯者からムーンダイヤモンドを取り戻し、女のかたきを討って以来、デュリオの人生は表向きは何も変わらなかったが心の内側は変わっていた。だが、カラコタを去るつもりはなかった。このとんでもなく汚い、貧しい街も、そこに暮らす弱い連中も、デュリオは好きだった。家族もなく、愛する女もなく、ひとり気ままに寂しく漂うような人生を、この吹き溜まりの中に置いておきたい。

「カラコタはいいよ。じいさん、おれに出て行けって言わないでくれよ。」

デュリオにとってカラコタは、失望と自責、復讐心に身を焦がしていたおのれを癒し、存在を許した土地だった。お前なら別の街でまっとうにやっていけると言われたことは一度や二度ではないが、ここが好きだとデュリオは思う。

老人は安堵のため息をつき、何度か頷いた。

「そうか、そうか…。この街はな、西にお前さんが、東にキャプテンがいて、まあ、なんとかなってるようなもんじゃ。いてくれるなら、ありがたいことじゃが…。」
「行かねえよ、どこにも。…おれはもう寝るよ、じいさん。おやすみ。」

デュリオは立ち上がり、寝床のある酒場へと向かった。火を離れると切り立った崖に寄り添うこの一帯は暗く、旅人のための橋からかろうじて光が届くばかりだ。デュリオは橋を見上げた。宝の地図が流行っても、こんな夜にはさすがに行き交う旅人の姿はない。

目を転じて半分曇った空に見える星を眺めると、あの日、復讐を助けてくれた旅の連中のことが胸に浮かぶ。彼らが人生を変えたのだ。

腕利きの盗賊を連れた一行の姿は、いつまでも心に残っていた。いいやつらだった。……いや、それだけではない。信頼に足る者なら幸いなことに今までの人生で幾人か出会ったけれど、あんな変わった目をした人間は初めてだった。世界を旅しているとあんなふうになるのか、あんな目をしているから世界中を旅するのか。旅人の心も旅する理由も、デュリオには分からないが。

まるで、常人の見ることのない、雲の果ての空を映したかのようなまなざしだった。積年の怒りを失った時、思いがけないほど優しく温かい気持ちになれたのは、あの旅人が手助けしてくれたおかげだと思う。一人ならきっと、もっと苦しんでいた。いや、一人では、行動に移すだけの決意が出来なかったのかもしれない。

また会いたい。
そう願わずにいられなかった。彼らは危険な洞窟を探索している様子だったが、あれほどの腕の主だ、きっと無事でいるだろう。今宵どこかで同じ星空を見上げているだろうか、あの透き通った眼で。その空が曇っていないといいとデュリオは思った。神に祈るわけではないけれど。

扉を開けると、薄明かりの中、夜更かしの仲間たちがニ、三人、デュリオをかえりみて親しげに名前を呼んだ。





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自己紹介:
ゲーム大好きモル元です。

9のプレイも一段落ついて、そろそろ7小説に戻ろうか、と書き始めた途端、シャークアイの知名度や活動人口の少なさを再び思い知って打ちひしがれている今日この頃です。皆さんにシャークアイのことを思い出してもらったり、好きになってもらうために、めげずに頑張って書いていきます!

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