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ドラゴンクエスト7の小説ブログです。 9プレイ日記もあります。
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バレンタインデー記念小説。

走り去る電車に乗る愛しいひと」と同じ設定の学園パロです。

「なないろの雫」の学園パラレルの基本設定は以下の通り。
フィッシュベル高校生徒会
会長 水原有須
副会長 網本麻理
会計 東園・グランエスタード・鍵。通称キーファ。

あと、シャークアイ(監査委員長)が登場します。

***




2月14日、
バレンタインデー。

朝から、
通学の電車のホーム、
校門前、教室、休み時間……

どの時間もどこかで、女の子から男の子に、
綺麗に包装された贈り物が手渡されていた。


なかには恥ずかしがりで本人から直接渡せない女の子もいて、
机の上に置いたりだとか、ことづかった友人から、というのもあった。
それは純情な恋の行事だったので、お祭り騒ぎというのとは少し違い、どこか静かさを守ろうとする雰囲気が学校中に漂っていた――12時過ぎの、お昼休みまでは。



「じゃーん! 見ろよアルス、マリベル! まだ昼なのに、こんなに貰ったぜー!!」

昼休みの生徒会室で、キーファは机の上いっぱいに積み上げられたチョコレートの山を前に、まさに満面の笑顔だ。麻里は「あんたってほんとに、デリカシーないわね!」と呆れたが、お弁当タイムのこの時間、生徒会室に限らず、男子ばかり、またはクラブのように気心の知れた者だけが集まった場所では、賑わいはそれまでとは違う様子になっていた。誰がいくつチョコレートをもらったか、あの女の子は誰に渡したか、誰が誰に告白したとか、チョコレートを渡そうとしたけれど断られた……そんな話でもちきりなのだ。

「キーファ、あんたが貰ったのはね、どーせ、本命チョコを作るついでの、練習用なのよ!」
「まーな。そーゆーのもあるかもなっ。でもさっ、嬉しいじゃん!」

麻里が水を差そうとしても全く無駄で、キーファは明るい表情を崩さなかった。チョコレートの数で具体的に人望を目の当たりにしたキーファはいつもの倍くらい自信に溢れていて、いつもの倍くらい、キラキラ輝いているようだった。

「モテるって、嬉しいじゃん!!」

そう、キーファは、容姿も調子もいいからモテるのだ。と言ってもキーファが女の子に対して思春期らしい興味があるかと言うとちっともそんなことはなかった。誰それが美人、だとか言う話には乗ったが、中身はまだまだ子供で、女の子の相手をするより、男友達の有須と遊ぶほうが楽しい。せっかくデートに誘われても「ありがとっ。でも、俺その日はアルスと遊ぶから!」と、まだ有須と約束してもいないのに言ってしまう男だった。

それでも、輝く太陽のようなキーファの魅力は学校中の女の子からもてはやされた。元の世界では色々なしがらみに苦しむこともあったから、今のほうが解放的な気分でいられるのかもしれず、屈託のない明るさに、誰もが魅了された。

「アルス、お前はどうなんだよ。どのくらい貰ったんだよ?」
「あ、うん…。」

キーファほどモテないと言っても、有須だって、生徒会長という有名人。
それに有須の素朴な雰囲気は、一部の女子から「カワイイ!」と評判でもあるのだ。

「えへへ。結構貰っちゃった。」

そう言った有須の机の上はきれいに片付いていた。キーファが、「どこにあるんだよ?」と室内をきょろきょろ見まわすと、有須は別の机にまとめてある二つの紙袋を指した。

「なんだよ、あれ?」
「何だろ。僕もよく分からないんだけど、知らない女の子が、僕宛のチョコレート集めて、ああやって紙袋にまとめてくれたんだ。」
「はあ~!? なんだよ、それ!」
「アルスってば、へんなのよ! なんか、アイドルみたいなの! ファンのね、代表者が勝手に決まってるみたいなの!」
「アイドルって、そうなのか?」
「そーよ、クラスの友達がそう言ってたわ。でも、ばっかみたい、相手はアルスなのに!」

有須が直接受け取った分もないわけではなかったが、そういう贈り物をまとめるためのからっぽの紙袋まで用意されていて、有須には分からないことだらけだ。おかげで授業の合間にしょっちゅう呼び出されるということがなくて楽だったのかもしれないけれど、昼休みのチャイムが鳴ってすぐ、知らない女の子が、いっぱいに詰まった紙袋とからっぽの紙袋を持ってやって来た時は面食らった。

「とりあえず、お昼にしようよ」

お菓子より、やっぱりご飯。
有須が鞄からいそいそと弁当を取り出そうとした時、
コンコン、とドアがノックされた。

「水原、いるか?」

ドアから顔をのぞかせたのは、監査委員会の鮫島敦士だった。
有須はびっくりして目を見開いた。

「鮫島先輩!」
「お昼時に悪いけど、この書類、今日の放課後までに生徒会の承認が必要……」
「鮫島先輩ぃ、チョコ、いくつ貰いました!?」

仕事の会話を遮って、キーファが口を挟んだ。
見ればキーファは、きりりと眉を上げて鮫島を睨むように見つめている。

(あーあ。対抗心燃やしちゃって…。)

麻里は内心でため息をついた。監査委員長の鮫島敦士は、有須の憧れの人。キーファにはそれが気に食わないのだろう。実のところ、麻里もちょっとだけ鮫島に嫉妬していたから、キーファの気持ちが分からないでもなかった。鮫島は確かによく見れば背も高いし顔立ちもきれいだけれど、何だかそれだけでしかなくて、ちっとも目立たない。男なのに髪が長いからそれが目立つはずなのに、それでも目立たない。喋れば人当たりはとてもいいけれど、性格まではよく知らないし……仕事以外で、いや仕事ですらろくに会話していない有須がどうして鮫島にそこまで心酔するのか、キーファはもちろん麻里にも、理解できなかった。


鮫島はキーファの机に積まれた贈り物を見て、「すごいなあ」と感嘆してから、珍しく少しだけ恥ずかしそうな顔をして抱えていたチョコレートを見せた。

「3つ。」
「えっ?」

キーファは厭味ではなく心から驚いた顔をした。
男同士のフェアな眼で見て、鮫島には大人の魅力がある。俺様よりは少ないのは当然としても、かなり多いだろうと予想、というか、覚悟していたのに。

「あの、それで全部ですか?」
「うん。今、こっちに来る途中で受け取った。皆かわいかったよ。」

大人びた鮫島にとってもやはりチョコレートを貰うことは嬉しいらしく、はにかんだ笑顔でそんなことを言った。麻里は3つのチョコレートを観察して、あることに気付いてしまった。

「……それ、全部本命チョコね……」

麻里がごくりと息を呑むようにして言った。キーファはきょとんとした顔をしたが、異世界人と言っても女の子の麻里の目には、鮫島の受け取った贈り物全てにそれぞれの特別な想いが込められていることが分かった。山と積まれたキーファのチョコレートとはわけが違う。キーファのように人気投票よろしく大量のチョコを受け取ることも、幼馴染ながら正直すごいと思うけれど、本気のものばかり3つだけ貰うっていうのは、何だか現実味のある個数で、もっとすごい……。

難しそうな顔をしている麻里に、鮫島はにこっと笑いかけた。

「でも、麻里ちゃんの義理チョコは欲しいな。」
「ああーっマリベルのチョコオオオ! 俺たちもまだ貰ってねーよ!」
「もーっ、キーファはいちいちうるさいわねー!! そんなにあるのに、まだ欲しいの!? 食い意地張ってるわね!」
「なんだよっ くれるって言っただろ!」
「べっ、別にあげるなんて言ってないじゃない!」

麻里は頬を紅潮させ、無理にふてくされたような表情を作りながら、鞄からチョコレートを出した。もちろん、キーファの分も、有須の分もちゃんと用意してある。朝から、いや昨日の夜から、いつ渡そうとそればかり気にしていた。本当のことを言うと、これを渡すタイミングというのはなかなか掴みにくいのだ。こうやって催促されたほうが、きっかけになって楽だった。その上、二人とも驚くほどの数のチョコレートを受け取ってくるし…。

「はい、どーぞ鮫島先輩!」

マリベルが綺麗に包装された箱を差し出すと、鮫島は驚いた顔をした。

「ほんとうにあるとは思わなかったなあ。誰かの分だったりしない?」
「大丈夫よ、これはちゃんと、監査委員会の皆さん用に作ったやつだから。カデルさんたちと食べて下さいね。」
「ありがとう。手作りなんだ。嬉しいな。」
「おいっ! マリベルっ、どーして鮫島先輩にチョコ用意してるんだよ! マリベルまで鮫島先輩に惚れてんのかよっ!」
「キーファは人の話を聞きなさいよっ。『監査委員会の皆さんで食べて下さい』って、たった今言ったでしょ!」

麻里とキーファのやりとりに、鮫島は明るく笑った。
キーファが「マリベルまで…」なんて余計なことを言ったから麻里は咄嗟に心配したが、鮫島はその部分は何も気付かなかったようだ。
麻里は頭のどこかで、「今、アルスのやつ絶対鮫島先輩の笑顔に見惚れてるわね」と思った。

「それっ、わいろじゃん! 生徒会が監査委員会にわいろ! ダメだろっ?」
「何よキーファ、あんた、妬いてるの? いいでしょ、このくらい!」

麻里は会話の隙にちらっと有須のほうを見た。案の定、さっきから無言の有須は、ぼーっとした顔で鮫島の様子を見ていた。一度だけ、「よく知りもしない人のどこがいいの」と訊いてみたことがある。有須は、鮫島の「顔の上げ方や俯く時の角度」とか、「手の動き」「歩き方」「肩の高さ」とか、あげくのはてには「髪の揺れる感じ」など、ひたすら意味不明の答えを返してきた。つまり他人から見ればどうということもない「生きている姿」それ自体に魅力を感じるというのは、一目ぼれのようなものなのだろう。

「ありがとう、麻里ちゃん。」

鮫島はもう一度麻里を見つめてそう言ったが、ふと麻里の指先に目をとめた。そしてその指をちょっと手に取るような仕草をしたので、麻里は我知らず真っ赤に顔を染めてしまった。

「マリベルッ! なに赤くなってんだよ!」

鮫島はすぐに手を離し、麻里に向かって少し笑いかけ、小さな声で、「会長かな?」と言った。それは質問というより口をついた独白という感じでしかなく、間近にいた麻里にしか聞こえなかった。麻里は騒がしいキーファを叱る余裕もなく、頬を赤くしたままうつむいてしまった。鮫島は、この指先の怪我に気付いたのだ。

「じゃあ、これで。また放課後に書類が追加されるかもしれないから、よろしく。…会長は、起きてる?」

鮫島は最後に有須に向かって笑って手を振った。有須ははじかれたように立ち上がり、椅子に足をひっかけて「あっ」とか「わっ」とか言いながら盛大に机を倒した。その時にはもうドアは閉まっていて、廊下を去る鮫島の靴音が数秒間、聞こえただけだった。有須は耳を研ぎ澄まし、むさぼるようにその靴音を聞き分けていた。肩の構え方とか、足を踏み出す時の身体の傾き、書類を渡す手つき、すべてが素晴らしいもののように心を、五感と魂を惹きつけた。彼の声の抑揚、説明の仕方、控えめな、あるいは思いがけず明るい笑い声も。

「…なー、マリベルー、チョコはー、おれたちにはー?」
「はいはい、あげるわよ!」

麻里はようやくあげるタイミングを得たチョコレートをキーファに手渡すと、有須のほうをきっと睨んだ。が、麻里の想像とは違って有須はもうぼんやりしてはいなかった。倒した机も知らないうちにきちっと直し、きらきら光る期待の目で麻里を見ている。真正面からそんな顔を向けられると、麻里は不意をつかれてどきっとしてしまう。

「…はい。アルスもよ。」
「ありがとう、マリベル!!」

有須は贈り物に夢中で、鮫島とは違って麻里の手の怪我には気付かなかった。それが当然で、鮫島が気付いたほうがおかしいと思う。昨日、板チョコレートを削っている時ちょっとだけ包丁でかすめてしまったのと、あとは湯煎にかけるときにちょっとだけ火傷をしてしまっただけだ。プライドの高い麻里は怪我したことを誰にも言っていないし、目立つバンドエイドを貼ったりもしていなかった。鮫島が「会長かな?」と聞いた時の声は、どこか他人を慈しむような優しい響きをもっていた。「会長かな?」ってどういう意味よ、と麻里は心の中で言い返したが、もちろん、どういう意味かは麻里が一番分かっていた。

「ああーっ!? アルスのチョコと俺のチョコ、ラッピング違うじゃねーか!! なんだよー、アルスのほうは本命チョコかよー!」
「ば…っか何言ってんのよ!! 一緒じゃないっていうだけでしょー!! それとも、お揃いじゃないとダメなの? キーファってば、子供ねー!!」
「なんだとー! じゃあ、交換してもいいのかよ!?」
「えっ。なっ、中に名前書いてあるから、それはダメッ!」

キーファが「そっちがいい」って言ったら、有須だったら平気で取り換えちゃうかしら?
麻里は不安になって有須のほうを見たが、有須は綺麗な包装を両手できゅっと抱えて、手放す気なんて微塵もない様子で、麻里に向かって特別嬉しそうな笑顔を見せた。




おしまい!


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プロフィール
HN:
モル元
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女性
自己紹介:
ゲーム大好きモル元です。

9のプレイも一段落ついて、そろそろ7小説に戻ろうか、と書き始めた途端、シャークアイの知名度や活動人口の少なさを再び思い知って打ちひしがれている今日この頃です。皆さんにシャークアイのことを思い出してもらったり、好きになってもらうために、めげずに頑張って書いていきます!

シャークアイ関連の雑談やコメントなど随時募集中。お気軽に話しかけてやって下さい。世の中にシャークアイの作品が増えるといいなと思って活動しています。

シャークアイ、かっこいいよね!
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