ドラゴンクエスト7の小説ブログです。
9プレイ日記もあります。
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この船に辿りつくまで楽器を手に世界中を旅して回ったというマーディラス出身の弦奏者は「陸のどの都市でもマール・デ・ドラゴーンに勝るほど荒々しい演奏を好む文明の民はいない」と言って笑っていた。今宵楽隊の奏でるメロディは耳に珍しい異国の音楽ばかりであったが、陸出身の者に言わせるとそれらは「非常に威勢の良い編曲」が施されているらしい。彼らはそれを親しみをこめてマール・デ・ドラゴーン風とか、もっと簡単に海賊風と呼んで特別愛していた。船縁や船上の木々は女たちによって飾り付けられ、木々の下には美しい衣装をつけた詩人たちや踊り子が集まって人々を楽しませている。海賊たちが傾けるグラスには普段とは違う酒が満ちていて、細かな泡を立ち上らせていた。
「やはりいつもの宴とは違うな」
シャークアイがそうひとりごちたのは音楽や装飾のせいもあったが、直接的には次々運ばれる料理の内容のためだった。数種類の肉、手の込んだデザートは普段の宴を盛り上げる大雑把な魚料理とは違っていた。シャークアイは給仕の男たちの波を遡るようにして厨房に行き着いた。開け放された扉から中に入ると、ぐつぐつと鍋の煮え立つ音が聞こえ、香草で調理された肉の芳しい香りが鼻腔を擽った。忙しく働く料理人たちの奥から料理長が出てきてシャークアイに挨拶した。
「シャークアイ様。いかがですか、甲板の様子は?」
「うん。女たちが楽しそうだが、海賊はあまり変わらんな。」
シャークアイがそう答えると、料理長は「そうでしょうなあ」と言って笑った。そこに若い料理人が寄って来て、「でも、料理がいつもと違うから、皆さんの食べっぷりも違うでしょう」と尋ねた。すらりと背が高く繊細な手をした男だ。肌も髪も色が明るく、さっぱりとしていて、そして賢そうな顔をしている。陸の大国フォロッドから、父と言うより船の厨房の連中に気に入られて乗船した男で、根が海賊でないこの男の、気安くて品のある喋り方、物怖じしない態度、それから彼が持ち込んだフォロッドの香のよい調理法のために、厨房で随分可愛がられていた。
「酒の味もいつもより繊細だな。」
シャークアイが感想をもらすとフォロッドの料理人は嬉しそうに笑った。
「本当はフォロッドの味は、全然、こんなものじゃないですよ。すっかり荒っぽくなってますよ。そういえば楽隊の人も、ほらマーディラス出身の連中、マール・デ・ドラゴーンは世界で一番好戦的なクリスマス・オーケストラをやると言って笑ってましたよ」
そうか、と言ってシャークアイも笑った。父は何かと物好きで、船の慣習にはないものを取り入れて船員を楽しませることは今日ばかりでなかった。船生まれではなくて冒険好きでこの船の乗組員に加わった者たちもまた、「竜の海すべてを旅する巨船ならではのこと」と言ってそれらを喜んだ。いずれも今日の祭りのように船特有の雰囲気の中でアレンジされ、よそよそしさは消え去り、生粋の海賊にも、旅客にも、新奇な楽しみを与えるのだ。
「若様、召し上がっていますか。よかったらこれ、味見して下せえよ」
今度は船育ちの料理人が、骨つきの鶏肉がふんだんに載った大皿を手に持ってシャークアイのほうに近づいてきた。
「あっしも作らせてもらったんで。うまく出来たと思うんですが」
シャークアイがそのひとつを試食してみた。普段はテーブルに並ぶことのない、今日のために仕入れた食材だ。
「うまい。これはフォロッド風なのか?」
「ええ、そうなんです。香りがいいんで。酒もすすみますぜ。」
「なんでも酒の肴に仕立てちまうんだから」
海賊男の言葉に近くにいた料理人たちが笑った。「宮殿の味がやられっぱなしですねえ」とフォロッドの若者は楽しそうに苦笑した。シャークアイは厨房を離れ、大賑わいの甲板を横切りながらその中に父の姿を探した。さきほどまで年長の船員たちに混じって酒を飲んでいたはずだが今はあたりに見当たらない。キャプテンは?と近くの男たちに訊いて回ると数人目が船長室の方向を指差した。シャークアイがその指の先を見上げると船の主は一人でバルコニーにもたれ、異国の酒を片手に、色とりどりの明りに照らされた家族たちの様子を慈しんでいた。息子の視線に気付いた彼はグラスを掲げて見せた。小休憩を終えた近くの楽隊が楽器を取り直してまたとびきり賑やかなクリスマス・ナンバーを奏で始め、真紅の衣装と雪のように真っ白な長い髭を着けた陸の男が一人、足取りをその軽快な楽曲に合わせ、子供たちにお菓子を配り歩いている。
「やはりいつもの宴とは違うな」
シャークアイがそうひとりごちたのは音楽や装飾のせいもあったが、直接的には次々運ばれる料理の内容のためだった。数種類の肉、手の込んだデザートは普段の宴を盛り上げる大雑把な魚料理とは違っていた。シャークアイは給仕の男たちの波を遡るようにして厨房に行き着いた。開け放された扉から中に入ると、ぐつぐつと鍋の煮え立つ音が聞こえ、香草で調理された肉の芳しい香りが鼻腔を擽った。忙しく働く料理人たちの奥から料理長が出てきてシャークアイに挨拶した。
「シャークアイ様。いかがですか、甲板の様子は?」
「うん。女たちが楽しそうだが、海賊はあまり変わらんな。」
シャークアイがそう答えると、料理長は「そうでしょうなあ」と言って笑った。そこに若い料理人が寄って来て、「でも、料理がいつもと違うから、皆さんの食べっぷりも違うでしょう」と尋ねた。すらりと背が高く繊細な手をした男だ。肌も髪も色が明るく、さっぱりとしていて、そして賢そうな顔をしている。陸の大国フォロッドから、父と言うより船の厨房の連中に気に入られて乗船した男で、根が海賊でないこの男の、気安くて品のある喋り方、物怖じしない態度、それから彼が持ち込んだフォロッドの香のよい調理法のために、厨房で随分可愛がられていた。
「酒の味もいつもより繊細だな。」
シャークアイが感想をもらすとフォロッドの料理人は嬉しそうに笑った。
「本当はフォロッドの味は、全然、こんなものじゃないですよ。すっかり荒っぽくなってますよ。そういえば楽隊の人も、ほらマーディラス出身の連中、マール・デ・ドラゴーンは世界で一番好戦的なクリスマス・オーケストラをやると言って笑ってましたよ」
そうか、と言ってシャークアイも笑った。父は何かと物好きで、船の慣習にはないものを取り入れて船員を楽しませることは今日ばかりでなかった。船生まれではなくて冒険好きでこの船の乗組員に加わった者たちもまた、「竜の海すべてを旅する巨船ならではのこと」と言ってそれらを喜んだ。いずれも今日の祭りのように船特有の雰囲気の中でアレンジされ、よそよそしさは消え去り、生粋の海賊にも、旅客にも、新奇な楽しみを与えるのだ。
「若様、召し上がっていますか。よかったらこれ、味見して下せえよ」
今度は船育ちの料理人が、骨つきの鶏肉がふんだんに載った大皿を手に持ってシャークアイのほうに近づいてきた。
「あっしも作らせてもらったんで。うまく出来たと思うんですが」
シャークアイがそのひとつを試食してみた。普段はテーブルに並ぶことのない、今日のために仕入れた食材だ。
「うまい。これはフォロッド風なのか?」
「ええ、そうなんです。香りがいいんで。酒もすすみますぜ。」
「なんでも酒の肴に仕立てちまうんだから」
海賊男の言葉に近くにいた料理人たちが笑った。「宮殿の味がやられっぱなしですねえ」とフォロッドの若者は楽しそうに苦笑した。シャークアイは厨房を離れ、大賑わいの甲板を横切りながらその中に父の姿を探した。さきほどまで年長の船員たちに混じって酒を飲んでいたはずだが今はあたりに見当たらない。キャプテンは?と近くの男たちに訊いて回ると数人目が船長室の方向を指差した。シャークアイがその指の先を見上げると船の主は一人でバルコニーにもたれ、異国の酒を片手に、色とりどりの明りに照らされた家族たちの様子を慈しんでいた。息子の視線に気付いた彼はグラスを掲げて見せた。小休憩を終えた近くの楽隊が楽器を取り直してまたとびきり賑やかなクリスマス・ナンバーを奏で始め、真紅の衣装と雪のように真っ白な長い髭を着けた陸の男が一人、足取りをその軽快な楽曲に合わせ、子供たちにお菓子を配り歩いている。
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モル元
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女性
自己紹介:
ゲーム大好きモル元です。
9のプレイも一段落ついて、そろそろ7小説に戻ろうか、と書き始めた途端、シャークアイの知名度や活動人口の少なさを再び思い知って打ちひしがれている今日この頃です。皆さんにシャークアイのことを思い出してもらったり、好きになってもらうために、めげずに頑張って書いていきます!
シャークアイ関連の雑談やコメントなど随時募集中。お気軽に話しかけてやって下さい。世の中にシャークアイの作品が増えるといいなと思って活動しています。
シャークアイ、かっこいいよね!
9のプレイも一段落ついて、そろそろ7小説に戻ろうか、と書き始めた途端、シャークアイの知名度や活動人口の少なさを再び思い知って打ちひしがれている今日この頃です。皆さんにシャークアイのことを思い出してもらったり、好きになってもらうために、めげずに頑張って書いていきます!
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