ドラゴンクエスト7の小説ブログです。
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「よーし、あげろー!」
威勢のいい掛け声とともに、漁師たちが一斉に網をひきあげる。アルスは大人たちに混じって、ぐっと力を込めて網を引いた。汗ばむ腕は日に焼け、世界中を旅していた頃よりもたくましいくらいだ。その腕に、今も水の紋章が見えていた。もはや何の意味もないと、アルスは自分の紋章を見るたびに思った。少しだけ、なげやりな気持ちで。
「あがるぞ!」
網にかかったたくさんの魚が甲板の上に打ちあげられた。水しぶきがきらめく。銀色の鱗は元気にはねて、日差しをはじいた。きらきらとまばゆいほど。
「おお、こいつは大漁だ!!」
漁師たちの歓声が船にあふれる中、ボルカノはそっとアルスを見た。アルスはせっかくの大漁にもあまり嬉しそうな顔をせず、ひとり黙って、離れた場所に行ってしまう。時々、こんな日があった。いつも明るくて一生懸命に働くアルスが、何か思い悩んでいるように物静かな日が。
「…アルス。」
ボルカノはアルスの隣まで歩いて行った。かけるべき言葉は、ボルカノの心の中にもうずっと以前からわだかまっていた。でも、言えない。うまく言えないのだ。アルスの口べただけはおれゆずりだ、とボルカノは思った。今、胸の内を伝えようとしても、うまく言えなくて、間違ってアルスを突き放してしまうような気がする。そうではなく、ただ、アルスを自由にするために話しかけたいのに。
「どうした、アルス? 今日はちょっと、元気がないな?」
「そんなことないよ。」
アルスはボルカノのほうを向いて少し笑った。アルスは子供の頃から、人に遠慮の出来る、やさしい性格だった。でも、こんなに思慮深げな表情、憂いを含んだまなざしで人を迎えるアルスは、これまでボルカノは見たことがなかった。
船べりに手をついて、アルスは遠い海の彼方を眺めていた。見果てぬ波の向こうに船影を探すように。
(アルス。お前は立派な漁師になった。だけど、どこへでも行っていいのだよ。)
ボルカノは結局何も言わず、元気づけるようにアルスの肩を叩いた。アルスの心はいつになく複雑で、これまでのようにただそばにいて、「おれはお前を信じているぞ」と言って励ましてやれるようなものではなかった。ボルカノの心もまた、言わずに息子に通じる気持ちでもない。こんなふうに二人の間に沈黙を落としたままでは、想い合う魂だけでは、乗り越えられない嵐がきていた。
そう分かっていても、どう切り出せばいいのか、ボルカノはきっかけを見つけられずにいた。ボルカノもまた迷い、悩んでいるからだ。腹を割って話そうとしたら、きっと冷静でいられないだろう。大人らしく、親らしく、落ち着いてアルスをさとしてやることは出来ないだろう。さみしくて。
不器用な親子は、二人並んで黙ったまま、はるかな空と海のはざまを長い間見つめていた。アルスのほうが先に、ふと足元に視線を落とした。
――――――――――
お題はこちらのサイト様から頂きました
capriccio様
威勢のいい掛け声とともに、漁師たちが一斉に網をひきあげる。アルスは大人たちに混じって、ぐっと力を込めて網を引いた。汗ばむ腕は日に焼け、世界中を旅していた頃よりもたくましいくらいだ。その腕に、今も水の紋章が見えていた。もはや何の意味もないと、アルスは自分の紋章を見るたびに思った。少しだけ、なげやりな気持ちで。
「あがるぞ!」
網にかかったたくさんの魚が甲板の上に打ちあげられた。水しぶきがきらめく。銀色の鱗は元気にはねて、日差しをはじいた。きらきらとまばゆいほど。
「おお、こいつは大漁だ!!」
漁師たちの歓声が船にあふれる中、ボルカノはそっとアルスを見た。アルスはせっかくの大漁にもあまり嬉しそうな顔をせず、ひとり黙って、離れた場所に行ってしまう。時々、こんな日があった。いつも明るくて一生懸命に働くアルスが、何か思い悩んでいるように物静かな日が。
「…アルス。」
ボルカノはアルスの隣まで歩いて行った。かけるべき言葉は、ボルカノの心の中にもうずっと以前からわだかまっていた。でも、言えない。うまく言えないのだ。アルスの口べただけはおれゆずりだ、とボルカノは思った。今、胸の内を伝えようとしても、うまく言えなくて、間違ってアルスを突き放してしまうような気がする。そうではなく、ただ、アルスを自由にするために話しかけたいのに。
「どうした、アルス? 今日はちょっと、元気がないな?」
「そんなことないよ。」
アルスはボルカノのほうを向いて少し笑った。アルスは子供の頃から、人に遠慮の出来る、やさしい性格だった。でも、こんなに思慮深げな表情、憂いを含んだまなざしで人を迎えるアルスは、これまでボルカノは見たことがなかった。
船べりに手をついて、アルスは遠い海の彼方を眺めていた。見果てぬ波の向こうに船影を探すように。
(アルス。お前は立派な漁師になった。だけど、どこへでも行っていいのだよ。)
ボルカノは結局何も言わず、元気づけるようにアルスの肩を叩いた。アルスの心はいつになく複雑で、これまでのようにただそばにいて、「おれはお前を信じているぞ」と言って励ましてやれるようなものではなかった。ボルカノの心もまた、言わずに息子に通じる気持ちでもない。こんなふうに二人の間に沈黙を落としたままでは、想い合う魂だけでは、乗り越えられない嵐がきていた。
そう分かっていても、どう切り出せばいいのか、ボルカノはきっかけを見つけられずにいた。ボルカノもまた迷い、悩んでいるからだ。腹を割って話そうとしたら、きっと冷静でいられないだろう。大人らしく、親らしく、落ち着いてアルスをさとしてやることは出来ないだろう。さみしくて。
不器用な親子は、二人並んで黙ったまま、はるかな空と海のはざまを長い間見つめていた。アルスのほうが先に、ふと足元に視線を落とした。
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capriccio様
2009年4月の更新記録です。
ちょっと変わったお題に挑戦です。
誰にしようかすごく迷ったのですが、あまりにも好きすぎて、シャークアイにしました。
苦手な方もいらっしゃると思いますので、気をつけて、読まないようにして下さい。
読める方のみ、ご覧下さい。
*****
誰にしようかすごく迷ったのですが、あまりにも好きすぎて、シャークアイにしました。
苦手な方もいらっしゃると思いますので、気をつけて、読まないようにして下さい。
読める方のみ、ご覧下さい。
*****
「うん、うん、そうか。そりゃお前さん、いいプレゼントをしただな。そのおなごもきっと喜んでいるだよ。」
フィッシュベルの西のかなた、切り株に腰かけた一人のきこりが、シカを相手に喋っている。事情を知らない者から見れば奇妙な光景だが、ガボは少しも驚かなかった。きこりは動物たちと会話できるという、ふしぎな力を持っているのだ。
「きこりのおっちゃん! 元気か!?」
ひょっこり顔を出したガボに気づいて、きこりは笑った。
「おお、ガボでねえか、久しぶりだな。」
ガボは、えへへ、と照れ笑いする。アルスたちと別れ、ガボはもう、ひとりきりだ。
「みんなも、元気か?」
ガボの問いかけに鳥はさえずり、リスは、小さな木の実をガボに差し出した。
「よく来たなあ、ガボ。夕めし、食ってくか?」
きこりは立ちあがってそう言った。ガボはもっと言いたいことがあったが、「うん!」と明るく返事をした。
きのこのスープのいいにおいが、あたりに漂っている。きこりは慣れた手つきで鍋の中をかき回しながら、ガボに話しかけた。
「なんでも、神様が復活したんだってなあ。ガボたちが、魔王を倒しちまったんだってなあ。」
きこりはまるで別の世界で起こったことのように言った。ここは免れた楽園、エスタード。その辺境にひとり暮らすきこりには、魔王の出現すら、いっときの闇に過ぎなかったのかもしれない。封印されていた島々がよみがって息づき、そして世界中で平和の日々が始まるという実感は、きこりにはないのだろう。
「のんきだなあ、おっちゃん! オイラたち、大変だったんだぞ!」
「わはは、ガボは偉いなあ。」
「魔王って、ものすごーく、きもちわるかったんだぞ!」
「はあー、すごい話だなあ。ここはずーっと平和だべ。こうしてガボも訪ねてきてくれるしなあ。」
きこりはオオカミの子供の頭を撫でるように、ガボの頭を撫でた。ごつごつした、大きくて、やさしい手だ。ガボは幸せな気持ちになった。大切なことを言う勇気が湧いてくる。
「おっちゃん、オイラが遊びに来て、喜んでくれるか?」
「もちろんだべ。」
「……じゃあ、おっちゃん。オイラたちの旅はもうおわったんだ。それで、オイラここでおっちゃんやみんなと暮らしたいんだ!」
ガボが思い切ってそう言うと、きこりは少し驚いて、それからすぐに嬉しそうな顔をした。
「そうかそうか、それはオラも、みんなも、すごーく嬉しいだよ。そうかそうか、神様が復活したら、こんないいことがあるだなあ。さっそく今夜から、いられるだか?」
ガボの顔が、ぱあっと明るくなった。
「うん! ありがとう、おっちゃん! よろしくな!」
――――――――――
お題はこちらのサイト様から頂きました
期間限定様
ガボはラスボス戦後のアミット漁のとき、
きこりのおじさんと一緒にフィッシュベルに来ていますね。
ガボはやっぱりまだ子供だと思うので、きこりのおじさんと一緒に平和に暮らしてほしいです。
フィッシュベルの西のかなた、切り株に腰かけた一人のきこりが、シカを相手に喋っている。事情を知らない者から見れば奇妙な光景だが、ガボは少しも驚かなかった。きこりは動物たちと会話できるという、ふしぎな力を持っているのだ。
「きこりのおっちゃん! 元気か!?」
ひょっこり顔を出したガボに気づいて、きこりは笑った。
「おお、ガボでねえか、久しぶりだな。」
ガボは、えへへ、と照れ笑いする。アルスたちと別れ、ガボはもう、ひとりきりだ。
「みんなも、元気か?」
ガボの問いかけに鳥はさえずり、リスは、小さな木の実をガボに差し出した。
「よく来たなあ、ガボ。夕めし、食ってくか?」
きこりは立ちあがってそう言った。ガボはもっと言いたいことがあったが、「うん!」と明るく返事をした。
きのこのスープのいいにおいが、あたりに漂っている。きこりは慣れた手つきで鍋の中をかき回しながら、ガボに話しかけた。
「なんでも、神様が復活したんだってなあ。ガボたちが、魔王を倒しちまったんだってなあ。」
きこりはまるで別の世界で起こったことのように言った。ここは免れた楽園、エスタード。その辺境にひとり暮らすきこりには、魔王の出現すら、いっときの闇に過ぎなかったのかもしれない。封印されていた島々がよみがって息づき、そして世界中で平和の日々が始まるという実感は、きこりにはないのだろう。
「のんきだなあ、おっちゃん! オイラたち、大変だったんだぞ!」
「わはは、ガボは偉いなあ。」
「魔王って、ものすごーく、きもちわるかったんだぞ!」
「はあー、すごい話だなあ。ここはずーっと平和だべ。こうしてガボも訪ねてきてくれるしなあ。」
きこりはオオカミの子供の頭を撫でるように、ガボの頭を撫でた。ごつごつした、大きくて、やさしい手だ。ガボは幸せな気持ちになった。大切なことを言う勇気が湧いてくる。
「おっちゃん、オイラが遊びに来て、喜んでくれるか?」
「もちろんだべ。」
「……じゃあ、おっちゃん。オイラたちの旅はもうおわったんだ。それで、オイラここでおっちゃんやみんなと暮らしたいんだ!」
ガボが思い切ってそう言うと、きこりは少し驚いて、それからすぐに嬉しそうな顔をした。
「そうかそうか、それはオラも、みんなも、すごーく嬉しいだよ。そうかそうか、神様が復活したら、こんないいことがあるだなあ。さっそく今夜から、いられるだか?」
ガボの顔が、ぱあっと明るくなった。
「うん! ありがとう、おっちゃん! よろしくな!」
――――――――――
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期間限定様
ガボはラスボス戦後のアミット漁のとき、
きこりのおじさんと一緒にフィッシュベルに来ていますね。
ガボはやっぱりまだ子供だと思うので、きこりのおじさんと一緒に平和に暮らしてほしいです。
500hitありがとうございました。
以下は、web拍手お返事です。
以下は、web拍手お返事です。
ご注意:
このお話は現代パラレルです。
読んで下さる方は「続きを読む」からどうぞ。
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モル元
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女性
自己紹介:
ゲーム大好きモル元です。
9のプレイも一段落ついて、そろそろ7小説に戻ろうか、と書き始めた途端、シャークアイの知名度や活動人口の少なさを再び思い知って打ちひしがれている今日この頃です。皆さんにシャークアイのことを思い出してもらったり、好きになってもらうために、めげずに頑張って書いていきます!
シャークアイ関連の雑談やコメントなど随時募集中。お気軽に話しかけてやって下さい。世の中にシャークアイの作品が増えるといいなと思って活動しています。
シャークアイ、かっこいいよね!
9のプレイも一段落ついて、そろそろ7小説に戻ろうか、と書き始めた途端、シャークアイの知名度や活動人口の少なさを再び思い知って打ちひしがれている今日この頃です。皆さんにシャークアイのことを思い出してもらったり、好きになってもらうために、めげずに頑張って書いていきます!
シャークアイ関連の雑談やコメントなど随時募集中。お気軽に話しかけてやって下さい。世の中にシャークアイの作品が増えるといいなと思って活動しています。
シャークアイ、かっこいいよね!
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