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ドラゴンクエスト7の小説ブログです。 9プレイ日記もあります。
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DQ9小説。
例のごとく、主人公の性別や一人称などは不確定です。





***




仲間たちは円を描いて立ち、隣り合う身体のどこかしらが触れ合っていることを確かめる。旅の喜びも悲しみも長く共有してきた友人たちだから、一緒にいて気詰まりなことなんてないはずなのに、今こうして、全員の視線が円の中心にある虚空、あるいは術者たるこの身に注がれているのを感じると、一種の緊迫を覚えた。

「あんまり見られると緊張するよ」

思わずぼやくと、仲間たちが少し笑った。微笑が交わされ、場に満ちていた空気が緩む。人の視界に捕らえられるようになってもうずいぶん経つけれど、まだ時々不思議な体験をしているような気分になる。自由に空をめぐる翼はもう戻らない、でもあの頃ウォルロの村人の目に映ることのなかった姿が、今は友人たちの生きる世界の一部として存在している、そのことは何にも代えがたい幸福に違いなかった。

再び静寂が訪れた。もう誰も声を立てない。
息をひそめ、あの特別の魔法が詠唱されるのを待っている。
 
 
「…ルーラ。」
 


その短い祈りの言葉に呼応して、あたたかい魔法の光がわき立ち、セントシュタインの草原の上に放射状に影を散らした。
上昇する強い気流が身体をさらう、この浮遊感が、好き。
 
 
 
真昼の晴天の中、一瞬でふわりと浮かび、眼前に聳えていた城は今や玩具のように小さくなった。
両側の友人が肩を抱く手に力を込める。
地上を歩くようになってから一時も離れない身体の重さが、この魔法の時だけは失われる。鳥と同じ高さの世界に両足を投げ出し、目を閉じると風の匂いに懐かしさを感じた。


こうして空にいるとき、すぐそばにイザヤール師匠の大きな翼があるかのように錯覚する。幼く柔い羽根を懸命に羽ばたかせ、彼の背中を追っていた、ルーラはあの頃を想うひそかな回想と、そして星空のどこかに眠るという彼への祈りを必ず呼び起こす。
 

「――ついたよ。ベクセリアだ。」
 
眼下に群れなす動物たちがみるみるうちに大きくなって、やがて両足がふわりと地面に着く。一呼吸遅れて、どっと全身に戻ってきた重みに足がふらついた。
 
「うえー、俺、酔った…」
「またかよ。情けないなあ。」
「鳥を見てると酔わないんだよ。お前はずっと地面見てるから酔うんだよ」

三人は空に酔い、一人は陸に酔う。仲間たちはそれを知っていて、陸の身体の重さに思わず座り込む天使を見て笑った。

「俺はルーラ、好きだな。飽きないよ。翼があるのってあんな感じかなと思う。」
「いやー、飛ばされてるっていうか…、鳥や天使が飛ぶのとは違うんじゃないか?」
「そうなのかな? どう?」
「…え?」
 
ぼんやりと空を見上げていた目を仲間たちのほうに戻すと、また何か目新しい、眩しい気持ちが胸にわき起こった。彼らとともにいる時、ふとした瞬間に今なおこうして押し寄せる感慨こそ、自分以外の誰に満足に伝えられるだろう。せめてイザヤールに、この幸福を伝えたかった。彼と再会してから過ごせた時間はあまりにも短かく、一番大切なところは心底で通じ合えたけれど、交わした言葉はわずかだった。だから背中の羽根のないこの姿を見て酷く痛ましそうな表情をした彼もまた、弟子の不幸を必要以上に嘆き、憐れんだまま、空の彼方へと去ったのかもしれない。それとも、仲間とともに旅する自分を見て、彼は分かってくれただろうか。



生き生きと輝く人間たちの瞳に自分の姿が映っていて、地上の旅を彼らとともにし、そのうえ世界樹の王女セレシアは、人とともに空に飛び立つ秘術までも授けた。大地の上にも、風の中にも、その果ての師匠が眠る星空にも、無限なる大いなる祝福があった。

「うん。翼で飛ぶのに、かなり似てると思う」
「そうなんだ。ねえ聞いた、みんな? 俺達、天使になったみたいじゃない?」



おしまい。
*********


DQ9は旧作に比べてルーラという魔法が特別な感じですよね。

ルーラって、知っている場所に瞬間移動するみたいな感じ?とも思っていたのですが、それにしては天井があるとぶつかるし…。リメイクDQ5では完全に「空に人や馬車を持ち上げて移動する」魔法だったことから、やっぱり「空を移動する魔法」なのかな、と思って書きました。



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ゲーム大好きモル元です。

9のプレイも一段落ついて、そろそろ7小説に戻ろうか、と書き始めた途端、シャークアイの知名度や活動人口の少なさを再び思い知って打ちひしがれている今日この頃です。皆さんにシャークアイのことを思い出してもらったり、好きになってもらうために、めげずに頑張って書いていきます!

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